別に日記でもレビューでもないので、思いつきで雑記を書いていきます。次回更新は「さよなら白鳥」の予定。
詩集「カノン」
角川文庫刊
ワタナベカズヱ著
1994年 390円
「月刊カドカワ」に70年生まれの若手詩人、ワタナベカズヱ氏が連載していた詩を集めたもの。 100ページにも満たない薄い本ですが、その内容はいいようもなく澱(よど)んで痛々しく、ときには狂気さえ感じます。少し引用してみましょう。
白昼夢
酸素の足らない魚のように 私の少女が喘いでる 真夏の甘く、暑苦しい大氣です 緑に溶けた濃い蜜の匂いが 幾ら咽せても 幾ら幾ら幾ら咽せても 喉にからみついて除(と)れないのです
とくとく流る温かな血も 暫くの間は駄目でしょか 真っ赤っかの薔薇 薔薇の棘 愈よ(いよいよ) 少女は虫の息 黒のあげはが飛びたつまひる 蝉の聲 蝉の聲
眩(めまい)の中 其ら全ては彼女にとって 幻と云う名の現実
不思議と読んでいて不快感はなく、1ページも読まないうちからいつの間にか眩惑の世界へと誘い込まれていく、そんな不思議な詩集です。書店や図書館にあれば是非読んでみましょう。
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