化学工学概論試験問題 98年度第4学期 担当教官:小宮山宏・関実


問題1 あるマンションの冷房について、下記の問いに答えよ。但し冷房はすべて、各戸別のヒートポンプで行うものとする。

1 冷房気からの排熱速度H(J/s)、外気に接した窓や壁の総面積S(m)と伝熱係数H(J/msK)、隣家と接した壁、床、天井の総面積S(m)と伝熱係数H(J/msK)を考慮して、部屋の温度Tの定常値を求める式を導出せよ。ただし、外気温度はT、隣接する各戸の温度はT、各戸の室内温度はどこも一定であるとする。他に必要な定数があれば、定義して、単位を明示して用いよ。

2 上式を参照しながら、マンションのすべての家が冷房をしているときと、一軒だけが冷房しているときの、一軒あたりの冷房負荷の差を論ぜよ。

3 建物の冷房と、都市全体の熱収支について、都市のヒートアイランド問題とエネルギー消費の問題を念頭において、どのような冷房システムが良いか論ぜよ。


問題2 以下の問いに答えよ。解答に至る過程も記すこと。

(1) 下図Aのように、室内と外気を隔てる壁に同じ大きさ(開口部の面積が1.0m)の窓が2つ開いている。外気の温度は−10℃であるが、室内は20℃に保たれるように暖房を働かせている。以下の設問に答えよ。ただし、ガラスおよびアクリル樹脂の熱伝導度は、それぞれ、1.0kcal/(m・h・℃)、0.20kcal/(m・h・℃)とせよ。

(図略)

1) 2つの窓に暑さ1.0cmのガラス板を入れた時、2つの窓から逃げる熱量を合わせると、毎分何カロリーになるのかを求めよ。

2) 厚さ1.0cmのガラス板と、同じく厚さ1.0cmのアクリル板、各2枚を2つの窓に取り付けるとき、@上図Bのように、ガラス板とアクリル板を重ねたものを2つ作ってそれぞれの窓に入れる場合、と、A上図Cのように、ガラス板とガラス板、アクリル板とアクリル板を重ねて別々の窓に入れる場合を比較して、熱の逃げ易さについて論じなさい。(どちらがどのくらい逃げやすいか?)

3) 前問2)で、アクリル板の厚さがガラス板と異なる場合には、熱の逃げ易さはどうなるか?


(2) ベンゼン(沸点81℃)−トルエン(沸点111℃)系では、比揮発度は組成によらずほぼ一定であり、αav=2.5と近似できる。20%のベンゼンを含むトルエンを蒸留して90%のベンゼンを得るためには、少なくとも何回の単蒸留を繰り返す必要があるか?

(3) 十分に混合された流通式の反応器がある。系内の混合状態を知るためにパルス応答法により、時刻t=0でトレーサー物質を濃度Cになるように系に入れた。「完全混合流れ」を仮定して、出口での濃度変化を時刻tの関数として求めよ。また、この反応器の滞留時間分布(RTD)関数を求めよ。ただし、平均滞留時間をτとせよ。