無機化学I試験問題 1999.3.5  


★次の問1〜問5のうち、任意の4問を選んで解答せよ。

問1 表1にCH、NH、HO、HFの性質を示す。これらについて以下の問いに答えよ。
(1)CHが最も低い融点、沸点をもつのはなぜか。
(2)HO、NHの分子の形を図示し、なぜそのような形をとるのか説明せよ。
(3)最も大きな結合エネルギーをもつのはHFであるが、融点、沸点はHOで最も高い。これらの理由を述べよ。

表1 CH、NH、HO、HFの物理的性質
  融点(℃) 沸点(℃) 双極子モーメント
(デバイ単位)
X−H結合エネルギー
(kJmol−1
CH −182.7 −161.6 414
NH −77.7 −33.4 1.47 391
0.0 100 1.85 463
HF −83.0 19.5 1.91 564

問2 Cl原子とN原子の共有結合半径(単結合の場合)はそれぞれ99pm、74pmである。Clの原子間距離(199pm)はClの共有結合半径の約2倍になっているが、Nの原子間距離(110pm)は2倍より小さい。また、多くの化学反応でClはNより高い活性を持つ。これらの理由を、ClとNの原子間結合の違いから説明せよ。

問3 NaClとCsClの結晶構造(室温)は、それぞれ、NaがClに6配位した立方格子(岩塩型構造)、CsがClに8配位した体心立方格子(CsCl構造)となる。なぜこれらの結晶構造となるのか、説明せよ。ただし、イオン半径は、Na:1000pm、Cs:170pm、O:140pm、Cl:160pmとして考えよ。

問4 次の事項を簡潔に説明せよ。
(1)遷移金属錯体における配位子場分裂
(2)有効核電荷と電気陰性度の関係

問5 表2に示した25℃、酸性溶液中における標準電位を用いて、次の問いに答えよ。
(1)過マンガン酸イオンMnOは酸化還元滴定などによく用いられる分析試薬である。酸性溶液中でMnOが酸化して、MnになりうるのはFe2+、Cl、Ce3+のうちどのイオンか、理由とともに示せ。
(2)2H(aq)→2HO(l)+O(g)の反応は自発的におこりえるかどうか判断し、理由とともに述べよ。

表2 標準電位(25℃、酸性溶液中)
電極反応 E゜/V
Ce4+(aq)+e→Ce3+(aq) +1.76
(aq)+2H(aq)+2e→2HO(l) +1.76
(g)+2H(aq)+2e→H(aq) +0.70
MnO(aq)+8H(aq)+5e→Mn2+(aq)+4H +1.51
Cl(g)+2e→2Cl(aq) +1.36
Fe3+(aq)+e→Fe2+(aq) +0.77
2H(aq)+2e→H(g)
Fe(aq)+2e→Fe(s) −0.44