我々はいま、量子力学の基本仮説よりスタートして、固体の物性がそれにより
説明できるかどうかを確認する作業を行おうとしている。そのためには、基本
仮説を固体に当てはめてみる必要がある。
しかしながら、現実の物質は複雑であるので、なるべくそれを単純化して、
仮説を適用してみる。もっとも基本になるのは金属の場合である。
これまでの講義はそのための準備のために使われた。これまでどのような
ことを行おうとしたかについて以下のように順を追って述べよ。
- Schrödinger方程式を基本仮説としてスタートしてみる。さらに必要
な仮定があったらそれを明記して前に進め。
- 固体に対してそれを当てはめてみる。まず、固体の中に電子が一個しか存
在しないときに、その電子に予言される状態を求める。ただし、一次元でよい。
- 二種類のアプローチを考えた。ポテンシャル井戸型と周期境界条件型であ
る。
- 時間があればなるべくその両者について以下の作業を行うこと。
- 許容される電子状態を求めよ。そのいくつかについて具体的に波動関
数を示せ。ただし、規格化はしなくてもかまわない。波数k,波長
λ,エネルギーEなども示せ。
- 各状態を概念的に図示せよ。
- エネルギーと波数の関係を示せ。
- もっとも単純なモデルにおいては、上記で求めた一電子の状態が多電子系
においても基本的に変わらないと仮定する。このような仮定の上に、さらに長
さLの一次元固体がz個の価電子を有し、原子間隔aで配列する場合につき、そ
のモデルが予言する固体の電子状態を求めよ。
特に、電子が占有する最高のエネルギー準位については注意を払うこと。
-
時間的にもし余裕があったら、得られた多数の重要結論と思う点について議論
せよ。
この試験の記述の仕方は、自分が教科書を書くつもりのスタイルがもっとも望
ましい。もしも上記の問題に歯が立たないと感じた人は、来週のこの授業まで
に上記解答をレポートの形で提出すること。この試験は「落とすためにやる」
のではない。「みんなについてきてもらうために行う」ものである。