物性論小試験(2000/11/20実施)過去問(北澤教官)

我々はいま、量子力学の基本仮説よりスタートして、固体の物性がそれにより 説明できるかどうかを確認する作業を行おうとしている。そのためには、基本 仮説を固体に当てはめてみる必要がある。

しかしながら、現実の物質は複雑であるので、なるべくそれを単純化して、 仮説を適用してみる。もっとも基本になるのは金属の場合である。

これまでの講義はそのための準備のために使われた。これまでどのような ことを行おうとしたかについて以下のように順を追って述べよ。

  1. Schrödinger方程式を基本仮説としてスタートしてみる。さらに必要 な仮定があったらそれを明記して前に進め。
  2. 固体に対してそれを当てはめてみる。まず、固体の中に電子が一個しか存 在しないときに、その電子に予言される状態を求める。ただし、一次元でよい。
  3. 二種類のアプローチを考えた。ポテンシャル井戸型と周期境界条件型であ る。
  4. 時間があればなるべくその両者について以下の作業を行うこと。
    1. 許容される電子状態を求めよ。そのいくつかについて具体的に波動関 数を示せ。ただし、規格化はしなくてもかまわない。波数k,波長 λ,エネルギーEなども示せ。
    2. 各状態を概念的に図示せよ。
    3. エネルギーと波数の関係を示せ。
  5. もっとも単純なモデルにおいては、上記で求めた一電子の状態が多電子系 においても基本的に変わらないと仮定する。このような仮定の上に、さらに長 さLの一次元固体がz個の価電子を有し、原子間隔aで配列する場合につき、そ のモデルが予言する固体の電子状態を求めよ。
    特に、電子が占有する最高のエネルギー準位については注意を払うこと。
  6. 時間的にもし余裕があったら、得られた多数の重要結論と思う点について議論 せよ。

この試験の記述の仕方は、自分が教科書を書くつもりのスタイルがもっとも望 ましい。もしも上記の問題に歯が立たないと感じた人は、来週のこの授業まで に上記解答をレポートの形で提出すること。この試験は「落とすためにやる」 のではない。「みんなについてきてもらうために行う」ものである。

back