その1 一日目


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時刻表

東京港十号埠頭 発
28日19:00
大島運輸(フェリー)
志布志港(鹿児島県) 着
29日21:00

東京湾に陽は落ちて

試験翌日の28日、鹿児島県の志布志湾を目指すため私は東京港へと向かった。私が乗るフェリー「ありあけ」は月に6本しか出ない、東京発志布志経由、奄美・沖縄行きの船である。東京湾10号埠頭を19:00に出航する予定であった。
東京湾10号埠頭は、お台場にある「パレットタウン(綺麗な観覧車のあるところね)」のちょうど向かい側に位置する貨物輸送用の人工島だ。
17時、「ゆりかもめ」の国際展示場正門前駅を降りて、10号埠頭へと徒歩で向かった。ここは貨物輸送用の人工島、歩行者などもとよりいない。無駄なまでに広い4車線道路がただまっすぐ通っているだけの奇妙なエリアである。東京湾って意外に広いんだよね。 さて、『船客ターミナル』に到着。巨大な貨物ターミナルの真ん中に掘っ建て小屋が立っているだけである。これじゃ海の家だっ。中のいすとテーブルも海の家としかいいようがない。これは『船客ターミナル』じゃないね。以下、待合所と改称。
…しかし、船での輸送においては人間って貨物のおまけみたいなものなんだよね。そもそも船で運ぶものっていうのは主に貨物だし、フェリー会社は貨物輸送でなんとか経営しているんだし。
待合所の前にはお目当てのフェリーが停泊していた。高さにして6階建てのビルぐらいである。相当大きいんだけど、東京湾沿いを歩いてくるとそうも思えなくなる。何しろ、高さ30mのタンカー(端から端まで視界に入らなかったりする)とかがごろごろいますからな。
さてさて、気象情報で知ってはいたのだが、沖縄上空で発生した台風8号と、東京湾を通過していった台風(6号だったか)の影響で東京へのフェリーの到着が遅れ、そのせいで出航も2時間ほど遅れるとのこと。これは予想していた事態だし、そもそも船なので特に気にしない。18:30に乗船したあと、出航時刻の20:30までデッキで時間をつぶした。
日が暮れるにつれ、パレットタウンの観覧車にイルミネーションがともる。湾岸の道路の街灯、「ゆりかもめ」の車窓の流れる灯り、そして観覧車のあまりに美しいネオン。折しも夏休みの土曜日ということもあり、湾岸地区では花火大会まで始まった(それも2箇所!)。さっきも書いたけど、10号埠頭はお台場とちょうど向かい合う位置にあり、これらのすべてを対岸から眺めることができるのだ! 出発を待つ間に飲んだスクリュードライバーの酔いが適度に回り、火照った肌を潮風にまかせながら、間近に迫る幻想的な光のハーモニーに目を奪われる。幸せである。めっちゃ幸せである。船が遅れて幸運であった。
嗚呼、あと足りないのは「夜風にロングヘアーをなびかせながら、ちょっと冷えてきた腕を気にする彼女」だけだな。彼女に上衣を羽織らせて、ふと一緒に花火を見上げると、都会の光の残像と水平線の漆黒の闇とのグラデーションに金星が煌めいているのさ。 …ふっ、柄じゃないぜ(飲み過ぎているわたし^^;) いやはや、一人旅でこんなこと書いてても全然楽しくないので以下略(じゃあ書くなよ!)。まあ、とにかく夜景は本っっっ当に綺麗だから、一回みんなも船から見てみてくれ。
さてさて、船は定刻75分遅れで東京港を出港。どこまでも続く京浜工業地帯の灯りの中を、一路志布志へ向かっていく。これから船はずっと本土沿いに航行する。思いっきり外洋を航行ということはしないらしい。

今日から明日への経由地: →観音崎(神奈川)
→剣崎
→石廊崎(静岡)
→御前崎(静岡)
→大王崎(三重)
→潮岬(和歌山)
→室戸岬
→足摺岬

地図:右から順に石廊崎→御前崎→大王崎→潮岬→室戸岬→足摺岬→志布志

客席はビルでいえば5階にあたる1フロアのみ。乗客数もせいぜい数十人といったところだ。船室は行き先と男/女/家族・カップルで4つに分かれ、そのほかにレストラン(開店後35分で閉店するナイスなレストランだ!)、案内所、ゲームセンター(91年のゲームが最新だ!)、カフェテリア(営業してねーよ)、売店(案内所と兼用)、トイレ、シャワー、ロビーがある。けっこういい感じだよな(写真)。

○そうそう、今「けっこう」って入れたら「欠航」って変換されたのよ。ATOKって文脈を読みとる機能があるんだよね(爆)。さすが頭いいぞATOK! MS-IMEの比じゃないさ。

あ、そうだ。雑談ついでに。今日ゆりかもめで来る途中にね、隣にいた親子の会話がすごかったのよ。とにかくその親がバカなの。

子「ねえ、この電車、誰が運転してるの?」
親「電気よ〜」←おい

子「ねえ、ゆりかもめってレールがないよ。どうやって走ってるの?」
親「浮いてるんでしょ。」←おいおい〜
子(対向列車を見て)「え? でもお母さん、あっちの電車浮いてないよ!
横で思わず吹き出してしまった私。

そして極めつけが、レインボーブリッジに向かってゆりかもめがループ線を登り始めたとき。
子「ねえ、お母さん。あれがレインボーブリッジだよねぇ! ねえ!」
親「いや、あれは違うでしょう。」

信じられるか? お台場に向かう電車の中で、レインボーブリッジをみながら「あれはレインボーブリッジじゃない」とか平然と言い放つ大人がいるんだよ。ギャハハ。人間を越えてるよな。なあ?

…というわけでそろそろ10時。陸地から近いところでは相当な海風が吹いていたけれど、そろそろ弱くなってきたようだ。っていうか、デッキでパソコンを打ってると画面に塩がふいてくる。それだけ風に塩分が強いということだ。電子機器は気をつけて使わないといけないな。

ではまた明日。航海二日目である。