その6 六日目
時刻表('01/08/02)
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寝過ごしたぁっ!朝、目が覚めると頭も体も非常にすっきりしている。なぜだか分からないが健康だ。 さて、本当は今日6:25福山発の福塩線に乗らないと計画がうまくいかないのであるが(計画参照)、もう取り乱していても仕方ないので10分で計画を立て直す。一昨日いわれたとおり「ロスが多い」計画だから、ちょっとだけ冗長コースを削ってしまえば大丈夫である。とはいえ、少し楽しみにしていた因美線・若桜鉄道・姫新線を切らなければならなくなった。残念無念。 ふと、今日一日は休みにして明日の朝から計画を再開すればホテル代1回分だけで済むのではないかという計算もよぎったが、悲しいかな、昨日の記録を見ていただければ分かるように、0時をすぎた段階で最後に車掌に青春18きっぷの印を押してもらってしまっている。もうこれは行くしかない。 福塩線・芸備線の旅ということで、まあとにかく福塩線に乗った。電化区間の府中までは、105系2連。宇部線とか福塩線とか、ここら辺で使われてるかわいい奴だ。 因美線と姫新線を逃したことが頭の端で悔やまれていたが、広く明るい田園の中を走っていくうちにだんだんどうでもよくなってくる。 府中にはすぐに到着した。ここからずっと非電化区間となる。三次行きが来るまで1時間近く待つことになったが、駅から外へ出る気にはなれなかったので出発を待つキハ120の中で時間をつぶした。 このキハ120は、JR西日本版1000系ってな感じの代物である。出力は強く、車体は軽く、オートマ制御で、ブレーキや加速までコンピュータの支援付き。車体は小さく、余計なスペースやトイレを廃して経済性を重視している。嫌だよね。こういうの。でもこの地域、芸備線と姫新線以外ほとんどこいつになってしまっているので仕方ない。 田園を走っている途中、6本入りの缶ビール箱を持った酔っぱらいが乗ってきた。女性を中心に絡み、「キーホルダーやるよ」とか「ビール呑めよ」とか迷惑な誘いを始めるし、運転士に 私は芸備線に乗り換えるので、「塩町」駅で本来は降りなければならないのだが、こんな島式ホーム一面しかない駅で40分も待っていられないので、この地方の一大都市である三次市まで出ることにした(芸備線もどうせ三次発だから問題なし)。 三次はこんな中国山地の真ん中にあるのに、交通の要衝でありまた工業団地などもあって栄えている街である。鉄道でいえば芸備線・三江[さんこう]線・福塩線である(もちろん今の中心は道路輸送だけどね)。 三次発14:17の列車に乗るために、芸備線ホームへ急ぐとそこにはキハ40単行が待っていらっしゃった。おお。こんなところでキハ40単行様に会えるとは。胸が幸せでいっぱいになる私(←変か?)。説明するとキハ40や47は今や、芸備線の広島付近や姫新線の姫路付近ぐらいでしか運用されていないという情報があったので突然の邂逅に喜んでいるわけね。 芸備線は線路状態が悪く、乗り心地がよくないという噂があるが、そんなことも感じさせずキハ40様は田園地帯を飛ばしていく。備後落合駅まで川(西城川のはず)に沿って上っていく。この川も非常にきれいな清流で、電車の上からでも川の底までクリアに見えた。 清流の秘境、備後落合備後落合駅に着いて唖然。木次線の出発駅かつ芸備線の乗り継ぎ駅なのに、駅はさびれた無人駅である。駅を出るとあるものは、
そのまま、引き寄せられるように川へ向かった。 全身が血液から冷えてゆく清涼感 ! 温度計では35度あるが、体はすっきりしたままで汗もかかない。顔を洗い、冷たい水を手ですくって飲むと、鮎やニジマスを食べたときほのかに香るかおりがした。川の上流特有の、石についた苔の匂いだ。 あー気持ちいいわ。本っ当に。 木次線は一日4本しかないから、17:44の最終列車(笑)まで2時間も待たなければならないのだが、岩に腰掛けて水に身を任せているだけで数十分など、すぐに経ってしまう。 やっぱり旅行ってのはこうあるべきですよね。特急で向かう定められた観光地、みんなが行くような寺、地方都市の漫遊、それもいいけど、私はそんなものを求めているわけじゃない。普通の人が非合理だと無視してしまうようなところに各駅停車で足を向けて、こんな場所を見つける。若いうちにしかできないことだ。 1時間ぐらいして、小さな駅に戻るとB5ノートが用意してあり(写真)、旅の途中に立ち寄った人々の書き込みがしてある。多くは一本前のトロッコ列車で来た人々であるが、毎日書き込みがされており、それなりに多くの客が毎日、ここを通り過ぎていくのだなあと思った。 木次線紀行17:30過ぎになってレールバス
キハ120単行に乗り込む。中では老運転士が一人で出発の準備を終え、ゆっくりとしていた。 普段乗らないと言い切るぐらいだから、本当に乗らないらしい。今日は私ともう一人、若い男性が乗っている。 などと、 運転士と会話している間にレールバスは国境の峠越えにさしかかる。 おいおい、そんなに客としゃべってて大丈夫か運転士さん? と思ったが、数秒の遅れもなくサミット(峠最高点)の三井野原に到着。 峠を下り始めると、左に国道314号線のすごいループ橋が見えた。上の地図で、鉄道が走っているのが谷の周りの山、ループ橋は谷の真ん中にあって二重ループで一気に高低差100m以上を降りていく。これを作るのにも相当な工費と工期がかかったそうだ。わざわざ減速して観光案内までしてくれた。 鉄道はループ線を使わず、スイッチバックで出雲坂根の駅へ下っていった。出雲坂根のスイッチバックも、鉄道好きにとっては聖地の一つ。今年の6月まではスイッチバックの後に駅でタブレット交換という、もう鉄道ファンが号泣して喜ぶようなシチュエーションがあったのだが(これだけのために奈良から最低、毎月2回以上木次線に乗りに来て写真を撮っていたという木次線フリークもいたという)、木次線のタブレット閉塞は6月で廃止、数ヶ月後に導入されるCTC(列車集中管理)の移行期間として今は駅が連絡をとりあいながら、手動で信号をかえているらしい。 っていうか一日4本だからさ、タブレットでもいいんじゃないか? 出雲坂根は「延命の水」という湧水が出ていて、ホームで飲むことができる。うん、非常に冷たい。 まあね、人が乗らない無人駅で乗客の相手をするJR職員は運転士しかいないけどな。 この数駅の峠を越えるだけで、列車は1時間ちかくかかる。峠のせいで木次線は80kmちょっとを行くのに2時間以上もかかるのである。 出雲横田は大社造りの駅である。 全国でも珍しい駅の一つだ。これは、近くにある「稲田神社」にちなんでいる。「稲田」と聞けば、分かる人は分かると思うけど、古事記などの八岐大陀伝説に出てくる「櫛名田比売[くしなだひめ](奇稲田姫)」を祀っている。さすが出雲の国に来たものだなと思う。しかし、櫛名田ってのも人権侵害されまくりな人ですわな。なにしろまず大蛇の生贄にされて死ぬ思いした上に、大蛇を倒した素戔嗚尊[すさのおのみこと]と結婚する羽目になって。助けてもらった立場上、スサノオがどんな人でも従うしかないじゃない?
伝説はどうあれ、スサノオがどんな体力バカだったか鬼畜野郎だったかなんて分からないもんね。 次の亀嵩[かめだけ]駅はそば粉100%の駅そば屋が名物である。っていうか、列車が滅多に来ないところでやってるのが名物なんだろうな。予約しておけば列車の中まで届けてくれるはずだから、行く機会のある人は頼んでみよう。580円だぞ。 次の出雲三成駅で5人残してほとんど降りてしまう。 列車につくと運転士はスタンバイして待っていてくれた。 地域の中心都市の木次(運転区もここにある)をすぎると、客はほとんどいなくなる。終着駅付近なのにねぇ。朝晩は松江に通う高校生でそれなりに混み合うということだが、晩でも今は方向が逆だから客はいない。 終点の宍道駅に定刻通り到着。ここで一応新型特急「スーパーおき」号米子行きに接続する。乗客の一人はスーパーおきに乗り込んでいった。キハ187系気動車2連は軽快に米子へ向かっていった。私が乗るのは、当然この後の各駅停車。 気動車天国 山陰線よってくる虫をたたきながら列車を待っていると、闇の中から国鉄色キハ47 2連がお出でになった。ああ恋しや国鉄色キハ4x様。おまけに、米子行きのはずなのに行き先表示が出雲市行きになっていらっしゃるっ。ここは宍道。米子と出雲市の間にある。おまけに、ここでは米子行きと出雲市行きが交換することになっている。 では、この列車はどっち? 宍道湖が南側で、この列車は西から来たから、米子行きだろうな。 日が暮れた宍道湖と中海に沿って、列車は米子へとひた走る。山陰本線はさすが「本線」といわれるだけあって、各駅停車でも85km/h以上出して心地よく駆け抜けていく。 米子はけっこう大きな駅である。今は深夜なので大したものはないが。とりあえず駅の外に出てみると、C57の動輪が展示されている(写真)。横にはジュークボックスっぽい物体が。 ここからは、夜行急行「だいせん」大阪行きで 福知山まで出る。この「だいせん」というのがまた、昔から漢らしい列車として知られているのだよ。 22:40頃、静かに入線してきたのは「キハ65 エーデル」。これは、ただのキハ65ではない。北近畿地区のローカル特急用にJRが改造したタイプのキハ65で、窓を大きくして片方を展望車に改造、椅子は新幹線と同じようなタイプになっている。これなら夜行でも楽にいけそうだ。 とはいえ、この乗客の少なさはなんだろう。同じ夜行タイプの「ムーンライトながら」などは、すぐに予約は切れてしまうわ、増発快速が出ても2時間ぐらい並ばないといい席がとれないわで大変なのに、たった2両編成の「だいせん」に乗ってきたのはせいぜい10数人。 このロクゴ様、発車時のうなりはかなりのものだが、アイドリング時はかなり静かだ(車内は、ね)。そして、大坂まで一気に飛ばしていくと夜が明ける前についてしまうので止まる駅で時間をつぶしながら行く。 1.鳥取駅。0:26着、1:17発。49分停車。
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