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坂と温泉の道〜伊豆ツーリング


西伊豆黄金崎にて。

2002年9月、台風一過の伊豆半島を、2日で半周しました。 道のアップダウンがあまりに激しいので閉口しました。
ついでに海水浴したり、混浴の露天風呂に一人で入ってきたりしました(混浴の意味ないしー)。

前日は嵐

この日までは5日間ほどUTMCの合宿で片瀬白田に泊まっていた。 が、行くと同時に台風に見舞われ、結局最終日まで台風。


もう。

こんな感じで。

一日目〜東伊豆から石廊崎へ


朝起きると伊豆大島が遠望できた。

9:30過ぎに白田の宿をチェックアウトして、一路UTMCの人間とは別行動をとる。 どこまでも続く海の見える、国道135号はとても気持ちのいい道…であったが、突然はじまった激しい登り道にやられた。稲取まで下りる前に、どうしてここまで登るんだ?という感じ。


起きてすぐの坂は疲れる。ここからさらに登って、結局は左に見える稲取まで降りる。

その後もけっこうきつめのアップダウンは続く。まあ、ある程度まで登ればそのあと下り道になるのが分かっているから、疲労が溜まるだけでそれ以上ひどいことにはならないけれども。 40分走ったところにある「今井浜海岸」で海水浴をした。外海に面しているだけあって、台風の影響で波が高い。ライフセーバーも「一度流されると陸まで帰ってくることができません」と放送していた。背が届く程度のところでも、顔より高い波が押し寄せてきて、自分もまわりも「ぐふぉぅっ」とかいいながら翻弄される感じ。とても沖に泳いでは行けない。しばらく水際を歩き回った後、甲羅干しをして、苺かき氷300円を食べて、出発。


こんな海は泳ぐしかないよねぇ。

というわけで泳いでみる。

だが、アップダウンを繰り返すうちに腹が減ってくる。下田に着く直前の、白浜を過ぎたところで「名物サザエ丼」という看板を見つけたので入ってみた。すると、どうもずいぶん高い店らしい。「あー失敗した」と思ったが、麦茶を出されてしまったので断るに断れず、そのまま頼む。1600円也。当初の計画の倍額かかってしまった。 …と思ったが、出てきたものが意外。サザエ丼以外にたぬきそばの小鉢と、吸い物と漬け物がついていた。サザエ丼自体もサザエをふんだんに卵とじ(かつ丼風)にしたもので、文句無し。どうせサザエなんてかけらぐらいのがいくつか入っているだけだろうと思っていたので意外だった。まあ、これが値段の差なんだろうな。隣の席では獲れ立てのトコブシをジュージューと焼いていた。美味そう。店を13:40頃出る。


下田名物サザエ丼。ピンぼけしたので、拡大画像はおいてません。

その後は下田を過ぎて1時間弱、14:30に南伊豆町は下賀茂温泉の、げんすユースホステルに着いてしまった(坂が多いせいで結局平均時速は10km/h足らずであったことになる。遅いな)。ペアレントは好々爺風。ちとぼけている。16:00チェックイン開始なのだが、早めに荷物を置かせてもらって、身軽になってから石廊崎へ。西回りの国道→県道コースがおすすめとのことだったが、コンスタントな登りと、たまの激しい下りが連続する、決して楽でない道である。トンネルだらけ。今まで40kmほどアップダウンを繰り返してきた身にはこたえる。ペアレント推奨の奥石廊の景色は堪能させてもらったが。


国道136号。東伊豆道路は135号で、下田を境に西側は136号となる。
しばらく進んで左に入ると、奥石廊から石廊崎へ至る激坂ルートに。

奥石廊の奇勝。

天気予報で有名な石廊崎灯台。

石廊崎。

石廊崎よりもだいぶ高いところに道路があるので、駐車場に止めてからずいぶん歩いた。併設の植物園風観光施設の脇を抜け、降りていくと気象庁の測候所があり、そこからしばらく降りたところに石廊崎灯台が。そこからさらに降りて狭い通路を進んだところが石廊崎である。神社になっており、縁結びの神様だそうだ。270度ぐらい岩場の景勝が広がるがけの上である。カップルの写真を撮ったかわりに私の写真も撮ってもらう。三宅島からは常に噴煙が上がっているのが見える。

帰りは県道16号を下田方面に戻り、そこから国道136号を走ってきた。こちらもやはり多少のアップダウンはあるが、それでもさっきよりはだいぶマシである。このコースで来ればよかった。
ユースは下賀茂温泉街の一角にある。塩分を含んだ泉質。白田は塩分がない。どちらもFe3+の黄色が微妙についている湯である。 東京からダイビングに来た社会人と風呂で会い、しばらく話した。バイクで一日で来たそうだ。バイクは速いなぁ。台風で水が濁ってしまったせいで、ダイビングしても視界が確保できないらしい。
私の部屋には、相部屋で誰かが車で来ることになっていたらしいが結局誰も来なかった。 8畳間を一人で使ってしまった。

二日目〜澄んだ海の西伊豆を行く

7:30から、4人で朝食。フランス人1人と、昨日のライダーと、もう一人のライダーで食事した。他の二人がいい感じにフランス人とコミュニケーション(英語で)しているのに、私はあんまりできなかった。というか、なんとなく腰が引けて話しかけられなかった。

ペアレントは下賀茂温泉から土肥まで、車で2時間弱だという。野辺山での経験から、これは自転車で6時間弱だろうと読んで行ったのだが、結局これは正しかった。
下賀茂を8:30に出発。一路松崎を目指す。吉祥までは平坦な県道でショートカットし、国道136号へ戻る。そしていきなりはじまる急勾配。これは、なんというか、だーいぶ辛い。昨日よりもだいぶ。えっちらおっちら登る。8速中、2〜4速ぐらいのギアでどうにか登れる程度。 宿で一緒だったライダーに途中で抜かれる。手を振って挨拶。


下賀茂からしばらく内陸だったが、海に出た。

昨日のようにすぐにサミットは来ず、かなり登ったあげくに妻良(めら)の街へ向けて激しいダウンヒル。ブレーキかけながらコーナを切りまくることになる。妻良は漁港のある小さな街。いい感じである。それに、こっちは外海ではなく駿河湾に面しているためか、波が低く海水が澄んでいる。漁港では、蒼い水の底にある石まで見える。こっちで泳げばよかったかな。ただ、ビーチは少ないんだけれども。


朝の妻良漁港。

それで、以下、西伊豆はすべてこのパターンだった。点在する漁港同士を結んでいく生活のラインが国道136号。伊豆半島は火山地帯が沈降してできているから、山がちな道になるのは仕方がない。そして、漁港は海抜0mにあるから、街がある度に道は山から下ってくる。結果的に「街→[ずっと登る→サミット(奇岩の眺めが見えることもある)→激しく下る]×数回→街」の繰り返し。だんだんうんざりしてくる。サミットを過ぎてからぐおーっと下るのはいい気分なのだが、また登るのが分かっていると気が重い。

というか、まあ、建設費の問題ってのもあるんだよね。山がちな場所に道を建設するときには、沿岸を通すよりはある程度の標高のところを通す方が距離が短くて済むので(山は上の方がとがっているから)、街道は山の中腹を走る。トンネルが必要な区間が出てきたらなおのこと。山の上を通せばトンネルは短く済む。トンネルの建設費はとても高いので、道はトンネルに入る前に無理にでも標高をぐんぐんと上げる。で、トンネルを過ぎるとまた下ってくる。
これに橋が加わると大変である。当然のことながら、谷は標高が低いほど狭くなり、橋を架けやすくなる。だから、作る立場としては無理をして標高の低いところにかけたがる。
このようにしてトンネルと橋の混在する道は、「上り→トンネル→下り」と「下り→橋→上り」をひたすら繰り返すいやーな道になる。

そうやって途中で降りてきた漁港の街、石部には無料の露天風呂(しかも混浴)があるということで、行ってみた。漁港の波止場からすぐのところにあった。確かに露天、駐車場の端に風呂が沸いていて、一応脱衣所でかくれるようになっている。温泉は湧きっぱなしなので常にきれいな湯が満タンになっている。いい感じじゃん、と思ってさっそく自転車を止めて服を脱いで入る。洗い場なんてものはなし。朝10:30だったので、誰もいなかった。ま、たとえ他に誰か入ってたとしても老人だったろうが。ここも海岸の塩質泉。


石部温泉の露天風呂。

気持ちよく20分ほど入ってから、また服を着て(アブが追ってくるので困った)上り坂へ。上り下りは松崎までが一番厳しかった。松崎は西伊豆随一の街、なのかな。しっかりとした街で、街の中は平坦な道であった。安心して走れた。神社にお参りして、サークルKでおにぎり1個とブルガリアヨーグルトを買って、街を後にした(12:00)。目指すは土肥、今日の目的地である。今までほどではないような気もしたが、次の温泉地、宇久須までもきつい山道であった。


おぉっ。これこそ人智のなせる技、「回転式 魚 天日干し機」でスよ。回ってまス。 こうやって天日干しさえも機械で作られるのですな。

自分が降りてきた道がトンネルの向こうに見える。かなりの勾配の坂を下ってきたようだ。

宇久須の手前に「←黄金崎へ1.9km」という看板があったので、行ってみることにした。トンネルを抜けてえっちらおっちら登ると、見慣れたような、岩が切り立った奇勝が。だだここは、岩の色が変わっている。安山岩に温水が入り込んで割れた後、表面の色が長年の間に変わっていったとか。「黄金崎」と言われるだけのことはある変わった色であった。


伊豆のトンネルのほとんどは、第二次ベビーブームの世代が仕事を始めて給料を手にし、レジャーに目覚めた1970年代に建設されたそうだ。

水底の見える海。蒼く澄んで美しい。是非拡大して見てみてくださいな。

宇久須からまーた登り。トンネルが連続する。ちょっとした歩道が必ずついているのでそこを走れば、大型車のせいで怖い目に遭うことはないのだが、暗い排水溝の上を走るため、前方に変な泥が溜まっていたりしないか確認しながら走らなければならないのでやっぱり怖い。前輪を巻き込まれて、狭い歩道から車道に投げ出されたらおしまいだからねぇ。 峠のあたりに「恋人岬」という場所があり、カップルがたくさんいちゃついていた。さっきからなぜか荷物が右に傾くのがおかしいな、と思っていたが、恋人岬で止まったついでに確認したところ、荷台の右側の固定ネジがなくなっていた。なんてこった。右へ左へコーナリングしすぎたせいか、荷物に引っ張られて荷台がゆがむうちにネジが外れてしまったのかなぁ。とりあえず、もう土肥は近い。降りるだけだ。もう少し辛抱してもらおう。


まぁ、観光産業という奴ですな。

そして、降りてきました土肥の街。市街の中心部に着く前にフェリーターミナルがあったので、そこへ入って自転車を畳む。田子の浦行きのフェリーは、最近全部清水行きになってしまったらしいので、あきらめて清水行きのチケットを買った。沼津行きは隣の埠頭だったらしい。 13:50頃についたが、フェリーは14:40出航。14:25に入港してからさっさと自動車を乗せて出航した。船から見下ろしても、完全に海の底まで見える。水が美しい。さらば西伊豆。


土肥港から清水へ向け出航。今回のツーリングはここで終了である。

景色がよければ駿河湾から富士の絶景が見えるのだが、残念かな今日はくもり。すそ野しか見えなかった。船に乗っている間に、高校野球で明徳義塾が優勝して閉会式が終わるところまでテレビでやっていた。ぼうっとしながら見る。
清水港はずいぶん大きな貿易港であった。コンテナがいっぱい。さっと自転車を組み立てて、清水駅へ直行。10分程度で駅までついた。荷台は使えないので、サンダルだけ荷台にとめてリュックは背負った。
さて、清水からはまっすぐ東京へ東海道線で帰ってもいいのだが、それだとせっかく青春18きっぷを持っているのにもったいない。ここは以前から乗ってみたかった身延線に乗ることにしよう。
清水から東海道線で富士、富士駅の駅そば屋で月見そばを食べ、身延線(17:30発)で身延(18:45)へ。35分停車している間に街を見て回ろうかと思ったが、県道9号線が一本通っていてそのまわりに商店がある程度のところまでしか行けない。梅酒とブロックのラーメン(100円)を買って電車へ。桔梗信玄餅を土産に買おうかとも思ったけど、それもなんだか不自然だよね。伊豆に行ったのに。
身延から同じ電車で甲府へ、甲府からは中央本線で帰ってきた。勝沼あたりのトンネルでパンタが激しく音を立てて辺り一面が青白くなるほどスパーク。大丈夫か中央本線?

今回は日程の関係などがあり土肥で終わりにしてしまったが、いずれ機会があれば土肥から沼津への海沿いルートも走ってみたい。土肥からは国道136号が内陸に入ってしまうので海岸線は県道になるのだが、これが険しい獣道みたいな道になってしまうのだ(舗装はされてるけど)。この道から駿河湾越しに見る富士山が絶景らしい。そう聞いたらもう、行くしかないよね。

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