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高野・龍神ツーリング

一日目: 大阪→高野山へ

たまたま一人で金・土に関西出張に行くことになった。自転車を持っていったところで咎める人もいない(現地ではね)。らっきー。というわけでスーツを持って東京駅へ。

今回の目的地は紀伊半島である。紀伊は冬は雪が降るし、夏は大雨が降る。なかなかいい時期がない。そこで梅雨前の今の時期がチャンスと、一日走ってくることにしたのだ。時間があれば紀伊半島の内陸の十津川村だ、大台ヶ原だ、熊野古道だ、と走って、今度は海沿いに出て鳥羽だ、賢島だ、白浜だ、串本だ、御坊だと…夢だけは拡がるんだけど。ま、一日しかないので、高野山から高野・龍神スカイラインを経由して紀伊田辺に出ることにしよう。山岳ルートで105km、ちょうどいいところだろう。

昼に仕事が終わったのでホテルに預けたサイクリングバッグを受け取り、普段着に着替えて難波へ。あいにく小雨が降っている。御堂筋は南方向一方通行で、けっこう走りやすい。昼飯は自由軒の「インデアンカレー」である。昔横浜のカレーミュージアムに出店があったので気に入って食べに行ったりしていたので、今回は本店に行くことにした。カレーといってもドライカレーよりは少し湿ったご飯に生卵がかけてあるというもの。人によっては「こんなものが名物で650円だなんて」といって罵ったりするのであるが、私はけっこう好きだ。
自由軒。
自由軒。
今回は1泊でもけっこう積載している。
今回は1泊でもけっこう積載している。
店はなかなか混んでいる。レジの所に座っている婆さんがすごい。鈴木その子もびっくりな厚化粧で、もはや年齢が分からん。たぶん偉い人なのだろう。容赦なく相席にされるのだが、狭いテーブルなのでなんか向かい合うと気まずいね。ウェイトレスも関西のおばちゃんだが、いろいろとアレな(?)指示を飛ばしてくる婆さんとどうも反目しているようである。まぁどこでも偉い人には困ったものです。いえ、他意はありませんとも。カレーは…まぁこんなもんだっけ。それほどでもないなぁ。
店を出たらさっそく駐輪禁止の紙が貼られていた。アーケード内はだめだったか。

さて、駅から南海電鉄に乗って高野山を目指す。今日はお寺がやっているユースホステルに泊まるのだ。快速急行の発車まで10分しかなかったのであわただしくパッキングし、急いでホームへ。列車に乗ってしばらくしたところで意識が飛んだ。
45分後、橋本に着いた。ここで切り離しがあるとかで、前の車両に移動。ここまでで大阪→高野の距離の大半を走った気がするのだが、さらにこれから45分かかるという。それもそのはず、橋本からは速度を全く出せない山岳路線に一変した。くねくねした線路を登りつつ、各駅で交換する。時間がかかるはずである。特急「こうや」とも何回かすれ違ったが、別段特急だからといって速く走っているわけでもないようである。
山間の駅でこうや号と交換する。
山間の駅でこうや号と交換する。
橋本を過ぎると駅はみんなこんな感じ。
橋本を過ぎると駅はみんなこんな感じ。
南海高野線の終点は極楽橋。降りると明らかに空気が違う。静謐な湿った空気の中にヒノキの香りがする。これはいい。あとで聞いたところ、土砂降りが降ったあとだったようだ。ちなみに極楽橋で降りる人はほとんどいないので、駅の出口はすごーく狭い。みんなそのままケーブルカーに乗り継いで高野山まで行くのだ。まぁそうよね。自転車野郎としてはここで敢えて展開し、高野山への細い一般道のヒルクライムを楽しむのもアリだ。というかいい雰囲気の山だし。うーん。惹かれる。でもケーブルカーの切符買っちゃったのよね。残念。
極楽橋駅の小さな出口。
極楽橋駅の小さな出口。
ケーブルカーを待つ。
ケーブルカーを待つ。
ケーブルカーは最大勾配50%を越える。線路を見るとなかなか笑える。駅を出たあたりは30%弱ぐらい。暗峠はこんなものか。やっぱあり得ないな。そのうち勾配はどんどんきつくなり、高野山駅の手前が一番きつい。高野山駅は自動改札でPITAPA(だっけ? スルッと関西だっけ? ICOCAじゃないよな(^^))が使える。ケーブルカーなのにびっくりさ。
53.6%
53.6%
さて、のろのろと自転車を展開し、高野の町へ向かう。駅から金剛峯寺への最短ルートは南海バスの私道で、歩行者すら通行禁止だ。仕方ないので別の道で一旦小さな峠を越え、大門を回って入っていく。優しい雨が降る緑の道。気分がいい。荷物が重いのでなかなか登りのスピードは出ない。なにしろスーツとかパソコンとか学会発表のポスターとか持ってるからな。あり得ないな。
ただ、高野山駅は高いところにあるので、下り基調で走っていける。巨大な大門の所でタクシーの運ちゃんに「自転車で登ってきたのかー」と話しかけられた。いやいや、ケーブルカー輪行である。チキン全開である。正直に答えて通り過ぎる。俺だって登りたかったけどさー。なんちて。本当だよ。
峠だー。
峠だー。
山門だー。
山門だー。
高野の街は1km以上続き、必要なものは一通り揃いそうだった。ただしコンビニはない。寺社の聖地として必要な「法衣」とか「数珠」とかの専門店があるのも独特だ。とりあえずは教科書にも載ってる金剛峯寺へ。山門の大きさからもっと巨大なものを想像していたが、意外と小さい。ただ参詣者が濃い気がする。どこかの寺の信徒会のような団体がバスを連ねて来たり、袈裟のようなものを掛けて何人かでやってきたり。せっかくなので中を見学する。いつもはお茶の接待をしてくれるらしいのだが、今日はなにかの用事でその場所が使われているとかで省略されてしまった。中の(もちろん現在も使われている)部屋には、金を塗ったふすまで囲われている豪華な場所もあれば、質素な小部屋もあった。しかしそんな部屋でもふすま絵は雪舟だったりして、その辺はさすが総本山といったところか。大きな石庭もなかなかであった。
金剛峯寺入口。
金剛峯寺入口。
本堂。
本堂。
石庭。
石庭。
新緑とあいまって美しい。
新緑とあいまって美しい。
石庭2。
石庭2。
石庭3。
石庭3。
…とはいえ、まぁ圧倒的な感じはしなかった。まだユースホステルのチェックインには時間があるので、「奥の院」に行ってみよう。自転車で入り口まで走り、参道の入り口へ。しかし、金剛峯寺の真の凄さはここからであった。
森の入口。
森の入口。
少しずつ森は暗くなって…
少しずつ森は暗くなって…
巨大な杉のご神木が並ぶ森の中には、基本的にお墓が並んでいる。雨のあとの澄んだ空気が作る静かな空間、だが人は誰もいない。墓標を見ると、「仙台 伊達家」「薩摩 島津家」「加賀 前田家」「秋田 佐竹家」……うひょ。なんかすごいな。歩いていくと「江崎グリコ」「クボタ」「森下仁丹」といった企業から「住友家」などの財閥まで、まぁとにかく私でも分かるような名前がずらずらと。森は続く。歩いていく。しかしお墓は終わらない。特攻隊の墓などもある。お墓は続く。
ずっと続く。
ずっと続く。
その先もお墓。
その先もお墓。
時計を見ると…もう30分も歩いてるんですけど。まだお墓かよ。ちなみに奥の院というのは弘法大師のお墓である。ここが一番奥の聖地であり、そこへの参道がずーーーーっとお墓になっているわけだ。そろそろ疲れてきたところで大きな建物が登場した。やっと着いた。歴史のありそうな建物である。お賽銭を入れていろいろとお願いする。
これが奥の院かと思われた…が。
これが奥の院かと思われた…が。
さて、帰ろうか、と思ってよく見ると…もっと奥にまだ墓が続いているではないか。あれ、これは社務所かなんかですか。…うお、騙された。少し歩くと橋があり「ここから先は聖地なので脱帽の上、下着のようにいい加減な格好で入らないこと。写真は撮らないこと」といった趣旨の看板がある。その下を流れる小川にはたくさんの卒塔婆が立ててあった。なんか変わった風景である。階段の奥を見やると、黒い建物がある。お、あれこそが聖地奥の院に違いない。この建物は賽銭箱もなく、入り口も分からない。へぇ。お賽銭を入れていろいろとお願いする。
この神秘的な建物が奥の院かと思われた…が。
この神秘的な建物が奥の院かと思われた…が。
さて、帰ろうか、と思ってよく見ると…案内板にもっと奥がある。あれれ? あーこれは灯籠を奉納する専用の建物らしい。…うお、また騙された。 奥へ回り込んでいくとろうそくが並び、ここで参道は行き止まり。立入禁止の向こう側にある小さめの祠(ほこら)が、弘法大師の御廟らしい。今度こそ賽銭を入れてお願いする。ここまで頑張って歩いてくると、なんかお願いしても叶えてもらえそうな気がする。これを延長して四国八十八ヶ所ぐらい頑張れば、なんか本当に叶いそうな。

時計を見ると、ユースのチェックイン時間まで30分しかないではないか。ここへ来る時点で40分以上歩いている。このままのペースで歩いたら間に合わない。仕方ない、走ろう。夕暮れの森の中、延々と続く墓を走り抜ける私。ここは凄いな。たしかにこれは真言宗の聖地というべき森だ。
十数分かかって森を走り抜けた頃にはすっかり汗だくになっていた。自転車にまたがり、軽く登坂。1km足らずでユースに到着した。ユースは「青巖寺」という名前。金剛峯寺はそのむかし青巖寺という名前だったらしいが、その名前を残すべく今はこの小さな寺が青巖寺と名乗っているようだ。入り口にはカワサキのバイク、ZZRが止まっていた。む、いろいろとステッカーが貼ってある。親が見たら泣きそうなステッカーだ。お、これは最近よく秋葉原に止まっている痛単車(いたんしゃ)というやつですな。
痛単車
痛単車
HARUHI ISM
HARUHI ISM
鉄道むすめとは違うか。どこのかな。
鉄道むすめとは違うか。どこのかな。
ご本人はCB400SFだとかなんとか。
ご本人はCB400SFだとかなんとか。
ステッカーは…ギロロ、ハルヒ、みくる、こなた、"ETERNAL BLAZE"、鉄道の擬人化キャラ(同人かな?)、など。そうですか。HARUHI ISMとかも、もはやお約束だなぁ。ギロロはまぁいい。ちょーっとヲタとして没個性的でないかい? なんか最近流行りの、痛車としての模範解答に落ち着いていないかい? もう踏み込んだんだからもっと迸らせようよ。 まぁいいですけどね。ひとの趣味ですからね。(このひとはmixiのヲタツーリングコミュにいるらしい)

宿に入ると本当にお寺だ。とりあえず挨拶しつつ、すでに到着していた数人の若者の中から痛そうな人を目で捜してみた。うーん。一瞬で二人までは絞り込めそう。一人はさだまさしを若くしたような短髪の眼鏡青年。UTMCで同期の、二次元ヲタではないけどアレな某氏に似ている(自分を差し置いてよく言うが…すいません)。もう一人は肉塊。さてどっちだろう。
夕飯の精進料理を食べながら観察していたが、どうやらバイクに乗っているのは前者のようであった。というわけで痛単車オーナーに決定。それにしても口調が某氏に似ている。あそこまでの自己主張はないけどネ。
夜は北海道から1泊2日で(!)来た同室の人と話しつつ、旅行記を書いていた。札幌ではみんな車のウィンカーを出さないから困るんだってさ。「北海道の人は基本的に冷たいんですよ。寒い冬はずっと家に籠もっているから。」だそうで。そうなのかなぁ?

二日目: どこまでも続く森の中を

7:30に食べるべく起きたが、だいぶだるい。昨日墓場で走ったせいじゃないだろうか。朝飯はユースホステルにしてはとてもよい感じで、精進料理である。今日の予報は曇りのち晴れとかだったはずだが、玄関を出てみるとだいぶ降っているではないか。がーん。さすが紀伊半島の山の中、侮れない。
ゴアテックスを引っ張り出して出発したら、雨は小降りになった。朝の冷気と優しい雨は、ヒルクライムには悪くない。学習能力のないことにまた、飲み物を手に入れないうちに市街地を抜けてしまった。コンビニがなかったからなぁ。自販機はあったけど。
朝雨@高野。
朝雨@高野。
さて、高野・龍神スカイラインは道幅の広い高速コーナーが続く道。交通量は少なく、足を止めるとカッコウとウグイスの鳴き声だけが渓谷に響く。しばらく走ると登坂がはじまり、9%の勾配で尾根筋へと標高を上げていく。私の体重+自転車+荷物(スーツとかパソコンとかポスターとかPSPとかいろいろ入ってる)を合わせると100kgぐらいなので、9%の登りはけっこういい運動になる。何も考えず、空っぽな心で走り続ける。途中で熊野古道と交差した。おぉ、これが世界遺産のアレか。背の高い杉林の中、若草の茂る山道であった。
高速コーナーを見下ろす。
高速コーナーを見下ろす。
熊野古道。
熊野古道。
尾根筋に出ると右も左も展望が開けた。とはいえ雨が降っているので雲から出たり入ったり。針葉樹をまとった1000m級の山々が、遠くどこまでも続いていた。この道は奈良県野迫川(のせがわ)村と和歌山県高野町の境となっているが、一つ目の峠の奈良側に、野迫川村の運営する案内所兼ドライブインがあった。ここでスポーツドリンクを補給し、トイレ休憩を取った。
深山を貫く安定路面。
深山を貫く安定路面。
登りも楽しい。
登りも楽しい。
ドライブイン。
ドライブイン。
雲の中へ。
雲の中へ。
ここから次の峠は1100m超の笹の茶屋峠。さくさく登坂していく。雨が多少強くなってきて、気温も低い。長袖にゴアがちょうどいいくらいである。ひたすら続く森はだんだん薄くなり、明るい山になってきた。
温泉はまだ先だ〜。
温泉はまだ先だ〜。
眺望はいまいち?
眺望はいまいち?
まだ雲の中。
まだ雲の中。
笹の茶屋峠を過ぎると最高地点の護摩壇山へ。さっきからずっと1000mオーバーの所を走っているが、ここで1300m弱まで登る。ドライブインに着くと、展望台があった。300円だがJAF会員の私は50円引いてくれるらしい。どうせガスってるんだろうな。オチは見えているが金を払って登る。うむ。ガスっている。天気がいいときは50km先の紀伊水道まで見えるらしいが、とりあえず見える範囲には森しかない。
展望台駐車場にて。
展望台駐車場にて。
展望台。
展望台。
眺望1。雲が低くたれこめる。
眺望1。雲が低くたれこめる。
眺望2。
眺望2。
所在なげに「乗馬マシン」が設置してあったので意味もなく乗ってみた。きっと250円の料金の中に入っているに違いない。なんかスピードを速めると「おぉぉおぉおおぉぉおおおお!」って感じであり、重い私の慣性に耐えきれないのか最速モードでは乗馬マシン自体が床から浮いたりしていたわけだが、なんかこれ以上このマシンで遊び続けるとここから帰り道の紀勢本線(南部(みなべ)駅まであと70km走る予定)までたどり着くための下半身の体力を使い果たしてしまうのではないかという不安がよぎったので、この辺にしておいてやったぜ。げふぅ。腹筋がつきそうだな。これは。

さて、ここからは下りである。下り勾配も8〜10%が続くので、ウェット路面ではそれなりにブレーキングに気を遣う。とはいえさすがはもと有料道路、40km/h以下に減速する必要のあるコーナーはあまりない。道は美しい川に沿うようになった。透明度が高く、周囲の森と相まって日本人の心に響く光景が広がる。
川が近づく。
川が近づく。
龍神村龍神。
龍神村龍神。
峠を越えるだけでこんな→
峠を越えるだけでこんな→
→眩しい世界が広がるなんて。
→眩しい世界が広がるなんて。
釣り人が所々にいるが、川が綺麗すぎて魚に見つかっちゃうんじゃないかな。どうかな。20km少々下っていくと、秘湯龍神温泉にたどりついたのであった。龍神村、格好いい自治体。でも最近は田辺市に吸収されてしまったようだ。温泉街はごく狭く、川の崖に張り付くようにいくつかの旅館が並ぶ。元湯の建物は新しく、コインロッカーなどが完備していた。秘湯という雰囲気でもないが、清潔でそれでいて塩素臭もなく(まあ掛け流しだし)大変いい感じである。ラドンの含有量は全国有数だとか。ダウンヒルで冷えた体をぬめりのある透明なお湯で暖めた。
秘境龍神温泉
秘境龍神温泉
川沿いの狭い道ぞいが温泉街の全てだ。
川沿いの狭い道ぞいが温泉街の全てだ。
…しかしここであまりゆっくりしているわけにはいかない。現在12:15だが、ここから40km弱離れた南部の町に、できれば15時前に到着したいのだ。そうすれば特急くろしおに乗れ、結果として東京に早く着けるからだ。
夏はそこにある。
夏はそこにある。
ペダルに力がこもる。楽しい。
ペダルに力がこもる。楽しい。
こうやって時間にせかされるのは本意ではないが、明日仕事だから仕方ない。40kmを2:30弱で走るとなると、下りだと楽かと思えるがそうでもない。海に出る途中に一度登り返しがあることを考えに入れなくてはいけないのだ。温泉から走ること10km以上、龍神村の西にある比較的大きな集落のスーパーでパンを買いついでに、おばちゃんに道の勾配について訪ねた。おばちゃんの言うことには、
「ここから紀伊水道に出るには3つの道がある。1つは奇絶峡(きぜつきょう。凄い名前だな)を通る険しい道。2つ目は太くて走りやすい道。だけどこれは紀伊田辺のさらに南(今回の目的地からはだいぶ南だ)に出るから遠回り。3つ目は近道で勾配も大したことないけれど、道幅がとても狭い道。個人的には2番目がオススメ」
とのことであった。まぁ普段車に乗っていれば走りやすさが一番だから、その選択を薦めるだろう。私は自転車だから、道幅は関係ない。勾配が緩くて近いなら間違いなく選択は3番である。
これ、町中のショッピングセンターの裏なんです。
これ、町中のショッピングセンターの裏なんです。
空。
空。
というわけで国道424号に入った。道は再び深い林の中に入り、1車線でずっと続いていく。本当に国道か?と不安になるが、それは間違いない。こんな狭い道なのに、ガードレールに緑色の「国道424号 阪和自動車道 みなべIC」という標示が出てくる。さすが紀伊半島の山はあなどれない。
再び森へ。
再び森へ。
峠のトンネル。
峠のトンネル。
時間がないのであまり周囲を気にしている暇がないまま、さくさくと登坂していく。この山の木々から、有名な「備長炭」は作られているのだ。炭の工場やら「○○炭素」なんて会社も沿道にある。そして深い山の中に備長炭の資料館を発見。なんと入り口の看板にびんちょうタンが…(知らない人はスルーしましょう)。いつの間にオフィシャルキャラになったんでしょうかこれは。こんな山里に(c)Alchemist とか書いた看板が立っていると微妙な気分になるぜ。え?ならない?
振興館。
振興館。
途中片側交互通行と、崩落による迂回を強いられたが、残りの大半は下りでどうにか時間には間に合いそうだ。南部まで10kmを切っても、全然山は途切れる素振りを見せない。道はただひたすらに、針葉樹の森に囲まれた山々を縫っていく。
ゆるやかに下っていく。
ゆるやかに下っていく。
海はまだか?
海はまだか?
しかし5kmを切ったあたりから、だんだん空が広くなってきた。空気もそれまでの冷気から、夏を感じさせる大気に。真っ青な空には大きな白い雲が。その先には海があるのか? 黒潮の流れる太平洋があるのか? 早くその姿を現してくれ! そう願ってもぜんぜん見えやしない。足は自然と速くなる。さあさあ。市街地に入ると畑が増えるが、ここは町全体に梅の果実の香りが漂っている。胸一杯に吸い込みたくなるいい香りだ。そう、ここは梅干しで有名な最高級の梅、南高梅(なんこうばい)の産地で、今がちょうど梅干しを漬けるシーズンなのだ。卸売市場のあたりなんかもう、それはもういい香りで。
市街地に入った。
市街地に入った。
紀伊水道まであと一歩。
紀伊水道まであと一歩。
すっかり幅の広くなった川を、橋で渡る。その先は紀勢本線、さらにその先は国道42号、そして海だ。ときに14時40分。とうとう私は海へとたどり着いたのだった。防波堤に立つと、陽光にきらめく海。海岸は弧を描いて美しく、青い空には大きな白い雲が広がっている。
海沿いの国道42号に合流した。到着だ。
海沿いの国道42号に合流した。到着だ。
105kmお疲れ様でした。
105kmお疲れ様でした。
防波堤に立つ。
防波堤に立つ。
のどかなところだ。
のどかなところだ。
↑ふと横を向けば翼をもつ少女とかそういうアレが手を広げて立っていてもおかしくなさそうな風景である。そう、某アレのモデルはここから30kmほど北にある港町なのだ。 国道から少し入ると、小さな白い駅があった。南部駅だ。
南部駅に到着。
南部駅に到着。
本当にここに特急が止まるの? という感じだが、みどりの窓口だってキヨスクだってある。10分で切符とビールを買い、残りの10分でパッキングしてくろしお号を待つ。周りを見回せば風景はどこまでも明るい陽光に包まれていた。

光。
光。
というわけで今回のツーリングはここでおしまい。これで全国47都道府県のうち、私が足を踏み入れていないのは佐賀県だけになった。紀伊半島は思っていた以上によい所であった。内陸に入れば深い森に包まれた静謐な山の中に聖地や秘湯があり、沿岸に出ればそこは空と海と光の世界。今度は東側にいってみたいところだ。

さて、次回更新は7月、沖縄本島一周ツーリングの予定です。お楽しみに。

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