5日目

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秋田内陸縦貫鉄道。合川駅にて。


前面展望。


阿仁合駅に到着。


こんな所にまで…

時刻表

能代
6:31発 五能線 キハ40単行
東能代
6:36着
6:55発 奥羽本線 701系2連
鷹ノ巣
7:21着
7:30発 秋田内陸縦貫鉄道 単行
阿仁合
8:26着
9:48発 秋田内陸縦貫鉄道 もりよし1号
角館
10:51着
13:34発 田沢湖線 701系2連
大曲
13:53着
15:09発 奥羽本線 快速こまくさ4号 701系2連
新庄
16:39着
16:53発予定(実際は遅延して17:03発) 陸羽東線 キハ112 2連
鳴子温泉
18:30遅着(予定では17:55)
19:30発 陸羽東線 キハ112 2連
小牛田
20:04着
  発 東北本線
仙台
 

秋田スギの里へ〜秋田内陸の豪雪地帯〜

今日は「秋田内陸縦貫鉄道」に乗って鷹巣から角館に出て、その後新庄へまわり、また「陸羽東線」で山を越えて太平洋側に出て、仙台まで行く。

朝早く目が覚めたので、予定を変更して始発で能代を出る。昨日の晩のうちに、雪が数センチ積もったようだ。始発は6:31。能代の街ではちらほら八百屋などが店を開き始めていた。この街のリズムは数時間早いようである。

東能代で奥羽本線に乗り換える。時間が少しあったので駅の外に出てみた。時刻表では最大のフォントで掲載されている東能代駅だが、外に出てみて愕然。国道7号へまっすぐ向かっていく4車線道路がある。それだけ。他にはな〜〜んにもない。市街などもとより存在しない。ここでも街道筋から離れて鉄道を建設したのだろうか。


東能代駅と駅前。

奥羽本線で鷹ノ巣へ出て、そこから接続する秋田内陸縦貫鉄道に乗る。最初は学生達でごった返していたが、阿仁前田から先は私を含めて3人しかいなかった。見たところ、学生は男女ともに色白。車窓の外側はずっと秋田杉の林が続いていた。

終点の阿仁合駅では、角館行きの急行「もりよし」号が出るまで1時間以上の時間がある。この阿仁町は14世紀からこちら、全国で最も有名な銅山の一つ阿仁銅山があったところだ。1970年に掘り尽くし、閉山になってからは林業が街の中心的産業となっている。駅を降りるとあたりは真っ白…なのは当たり前だから今さらどうでもいいのだが、山の方から絶えずチェーンソーの音が聞こえてきた。スギの木を伐採しているのであろう。

駅から暫く歩いていくと銅山の資料館があるということで、雪道を歩いていく。途中のバス停を見ると、バスは1日1往復らしい。しかし、街中に「カードキャプターさくら 封印されたカード」のポスターが貼ってあるのが気になる(^^;)。よく見ると、この秋田内陸の各村の公民館を、劇場版のフィルムが巡回していくらしい。そのため、各村での放映は一回。CLAMPもこんな所まで膾炙しているのね。

阿仁銅山の記念館は、当時の外人技師が住んでいた異人館とともに、鉱石や採掘の記録を展示していた。もちろん客は私一人。雪国もここまで来れば、観光客など誰もいない。


役場前にて。埋まったバス停と時刻。休日運休だ。 

 

駅では、おばさんが券売機の間で駅員に「角館まで3枚、買いたいんだけど、自動券売機って使い方分からないから買ってくんない?」という趣旨のことをいっていた(現地の言葉は全然聞き取れないんだけど…)。田舎過ぎて券売機を見たことないのかなぁ。街より外になんて出ないのかなぁ。私には信じられなかった。っていうか、切符が買えないっていうのはまずいと思うぞ。でも、駅員は当然のような顔をして彼女に切符を買ってあげている。のどかなものだ。

さて、今度乗るのは同じく秋田内陸線の急行「もりよし」号。この車両は、秋田内陸縦貫鉄道が国鉄から第三セクターになるとき、その転換交付金で建造した豪華な車両で、2両編成のディーゼルカーでありながら、前面展望・ロビー・喫煙席・自動販売機・売店・車内販売まで完備しているというもの。こんな車両なかなかありはしない。
一番前の展望席に座ったのだが、途中からあいにくの地吹雪が吹き始める。視界は数十メートル、そのせいで展望も何もない。ただまわり一面が白いだけであった。車掌さんは女性で、「車掌 兼 車内販売の姉さん 兼 売店の売り子さん」であった。何でも屋さんである。そういえば津軽鉄道の車掌さんは車内の掃除から石炭ストーブの世話までやっていたっけ。

そんな真っ白の地吹雪の中、列車は角館へと入っていったのだった。


まだこのころはましだったんです。


雪が止んで、小京都の風情。


吹雪がぶり返す。右側の方で何となく霞んでるのが、名物桜並木。

地吹雪の角館で遭難?

角館の駅に着くと、外で「ヒューヒューグオーーーーーーッ」という音が。吹雪がまともに吹いているのだ。ちなみに、到着が10:55、田沢湖線の出発は13:34。ここで観光するべきか?

いや、やっぱしやるしかないだろう?! 何しろ雪の小京都 だし、なぁ?! (でも吹雪)

と一念発起、頑張って武家屋敷の街へと踏み出す。傘を差したとたんに「バキッ」いきなりこわれる。どうにか直して歩き出すと、吹雪が止んで青空が出てきた。ラッキーだと思い、小雪の中を歩く。角館の中心部もやはり鉄道からは離れており、1kmメートルぐらい歩く。そこから先は、柳や桜の木と武家屋敷の建築が道沿いに並び、真っ白になって何ともよい雰囲気であった。これで足元が雪でなければよいのだが…もう中までびっしょり。

さて、武器屋敷の町並みも途切れてきたし、そろそろ帰ろうか…と思ったら、いつの間にか駅から3km程も来ていたことに気が付き、国道を使って引き返そうと考えた。すると、いきなり復活した吹雪っ ! (T_T);

最初はどうにかなると思っていたのだが、まったくそんなことはない。晴れているときの3kmと吹雪の中の3kmがどれだけ違うか、皆さんは想像が付くだろうか? まず視界が遮られる。道の端さえ、ぼんやりと輪郭だけがかすんでくる。人はもちろんいない。ここでの雪は、結晶が直径5mm程度の珠状に成長したもので、東京の雪とは全然違った。服をしっかり着ていても下着の中まで雪が吹き込んできてしまって冷たいのなんの。今回東北へ来て、はじめて「寒い」と思った。

さて、どうにか駅へ1.5kmぐらいのところに辿り着き、駅方面へ入っていった。ちなみに、先ほどから人はほとんどいない。ずっと歩くにつれて、駅前の雰囲気になってくる…はずなのだが、あれ? さっきと雰囲気が違う! でも、自分を信じて前へ進む…が、?? 何と、途中から人家がなくなってしまった(爆…とかいって笑ってる場合じゃないよぉ)。

でもさらに1kmぐらい吹雪の中を根性で歩く。全身雪だらけで空腹もつのってきたそのとき、秋田新幹線の線路が見えた。助かったぁ…と思っていってみると看板が。

(看板)「【↑角館駅】」

あれ? 駅を過ぎて先までいっちゃったですか? あーもうっ。(かなり必死)

駅を出てから1時間以上吹雪の中。東京の冬支度でここまで来ている私の手や顔はそろそろ感覚が薄れてきた。それでもまあ、駅の位置が分かる以上ひたすら道を進むしかない。地吹雪は相変わらず、目を開けているのがやっとの状態であったが、どうにか駅の建物へと逃げ込むことができた。

冬の豪雪地帯に観光に行くのは、覚悟していてもなかなか災難だった。


新庄駅にて。吹雪の中を走り抜けてきた701系「こまくさ」

 

 

大曲→新庄→陸羽東線…→仙台

さて、角館駅にどうにか辿り着いたあとは、いよいよ東京へ向かっていく。ホントは、角館からなら秋田新幹線で今日中に東京へ着くことなど造作もないのだが、こちらは節約して青春18きっぷなのでそんな真似はできない。

おまけに、秋田新幹線が開通したせいで田沢湖線(線路は秋田新幹線のものを使う)の各駅停車は極端に本数が減ってしまった。上下線で一日7往復しかないのである。角館でも、大曲でも乗換の接続は極めて悪い。13:34発の大曲行きに乗ると、すぐに14時前に大曲に着く。それなのに新庄行き奥羽本線は15:09発までない。
*そうそう、田沢湖線を今走っている各駅停車は秋田新幹線と同じ線路=東北新幹線と同じ線路 を走るため、軌道の幅が1435mm(普通のJRは1067mm)の特殊仕様車両(701系・改)を使っている。線路はPC軌道なので、乗り心地は甚だ良い。

ただ待っているだけでは旅している意味がないので、懲(こ)りもせずに大曲の街を歩いた。大曲では、雪は降っているけれども地吹雪ではなかったので別に困らない。この街は今まで行った街の中では一番栄えている。人も店も活気があり、生きた街を歩いているという実感があった。ゲームショップでは「Keyフェア」と称してKanonやAirを特売していた。雪国で雪国のゲームっていうのは売れるのかねぇ。大曲なんて、Kanonの舞台そのままって感じだけれども。

大曲15:09発の快速こまくさ4号で新庄へ出る。陸羽東線に乗るためだ。陸羽東線は新庄から東北線の小牛田までを結ぶローカル線である。新幹線ができて仙山線が電化されているいまさら、このような線を使う機会などこんなときしかないので、是非乗っておく。

さて、大曲を出てから再び地吹雪が強くなった。ゴーゴーと唸るばかりでガラスの外はまきあげられる雪ばかり。列車はみな雪だらけで駅へと入ってくる。ま、JRの701系は運転席の前面ガラスが熱線ガラスなので、秋田内陸線のようにガラスが雪だらけになって視界が悪くなるということだけは避けられる。新庄に近づくに従って吹雪が強くなり、到着した頃には電車は窓ガラスまで含めて雪だらけになっていた(写真)。


雪山を強行突破。視界0のところで雪を巻き上げると、写真のようにヘッドライトを至近距離で反射するのである(クリックして拡大)。


豪雪をぬけてきた陸羽東線。鳴子温泉駅にて。なんだかすげぇ。

 

新庄からは、陸羽東線に乗り換えて鳴子温泉へ向かう。17時の新庄の駅は、学生でごった返していた。私は乗車位置に並んで待っていたのだが、この土地の女子高生は構わず割り込んでくるらしい。

私のいる前に6人割り込んできた。
ここが新宿なら、真っ先に注意するところだが私はここでは異邦人なので黙っていた。

さて、発車時間の16:53になったが、電車は発車するどころか到着さえしない。10分ほど経って、「到着します」という放送が入った。

彼女たちがいうことには「いやー、ちゃんと並んでおいて良かったね〜」(ここら辺から訛りは大したことはない)
ここが新宿なら間違いなく張り倒すところだが、私はここでは異邦人なので、舌打ちして精一杯抵抗した。

だんだんホームが混み合ってきた。

彼女たちがいうことには「ねえ、何人かでブロックしてる間に、みんなの分の席をとるっていいと思わない?」
突き落とすぞこのアマ! 新大久保とかで。新大久保なら落ちても大丈夫。みんな命を粗末にして救ってくれるからねぇ。

…な〜んていってるうちに、陸羽東線がやっと到着した。 今度も雪まみれだが、これはレベルが違う。先頭部に20cmぐらいの雪の層ができていて、ワイパーの部分だけ雪がない。

彼女たちがいうことには「あ、電車が来たよ、下がらなきゃ! 」 そういって最初割り込んだ位置から後ろへぐいぐい押してくる。
…もう、コメントしませんが...

地吹雪はさらに激しくなるばかり。途中から、「吹雪のため25km/hに徐行運転します」

…しばらくして

「前に雪があって進めなくなりました。バックして、助走を付けて突破します」との放送。

ねえちょっと、マジっすか?

と思っていたら、運転士は(こういうとき、ワンマンだと全部一人でやらなきゃいけないから、しゃれにならないほど大変だ)実際にバックを始めた。

そして、速度を付けて「どばーん!!」と本当に音を立てて突破(写真)。その後も新型気動車キハ112のパワーにものをいわせて(この車両はハイパワーディーゼルエンジンを搭載した新型で加速性能・燃費ともにすぐれているのだ ! 私は嫌いだが…) 雪の吹き溜まりを突破していく。

視界はずっとほぼ 0。吹き上がる雪と地吹雪で数センチ先が真っ白の雪煙だ。運転士は座っていると前が全然見えないので、立ち上がって前面窓に張りつくようにして運転している。

そのまま時速25〜40kmで運転し、車内に乗っていた私を含め10人弱は、ずっと緊張しながら前を見守っていた。

老運転士のつぶやき「こりゃあ、俺のテクニックがなきゃ鳴子温泉まで着かねえぞ」

ちなみに、今

↑ここ(うえの「豪雪」)だっ。中山峠を下る部分などに、吹き溜まりができて線路を遮っている。

その後、中山平温泉あたりで降りる客がドアを開けようとしたが、ドアが凍り付いて開かない!!!

運転士がケリを入れてがちゃがちゃやると、1分ぐらいでどうにかドアが開いた。

さて、発車しようとすると、ドアが凍り付いて閉まらない!!! (爆)

結局閉めるのに1分半ぐらいかかった。

今から小牛田の向こうの仙台までいくっていうのに、鳴子温泉までたどり着けなかったら、ホントに冗談じゃない事態になる。

こーゆーところなんです。老運転士のつぶやき「頼む、この鉄橋だけは越えてくれ。あと10m、あと10mだけでいいんだよ。その先はトンネルだから ! 頼むっ!」

こんな声が我々に聞こえてくるもんだから、いいようもなく不安になったのだが、どうにかこうにか鳴子温泉まで着けた。
普通だと所要時間1:02で17:55着の所が、18:30に着いた。
駅で運転士は心底ホッとした様子だった。

もちろん鳴子温泉駅での接続列車はとっくにいってしまっている。次は19:00までない。

乗ろうとすると、またさっきと同じ運転士が。社員酷使してますねぇJR。ま、怖いのは新庄へ引き返す快速列車の運転士だけれど…(汗

まあ、中山峠を越えた以上、先に難所はないらしいので気動車キハ112は定刻通り雪を突破していった。

小牛田には定刻到着し、つつがなく東北本線に乗り継ぎ。東北本線で仙台へ出て、そこから地下鉄でホテルの最寄り駅へいった。明日は仙台観光・東北本線支線(利府線)に乗ったあと、常磐線全線を各駅停車で制覇して上野へ出る。