3/6 夜明けの関門海峡へ
小倉から下関まで自転車、あとは鉄道で移動。 |
朝、小倉に着いたのは5時であった。下船して顔を洗い、自転車を組み立てて港を出ると、小倉駅はすぐだった。これは分かりやすい。全国の港がみんなこんな感じだったら、私みたいな人が困らなくて済むんだが…
あとは国道で海沿いに門司へ向かう。まだ夜明け前なのでライトを点け、普通の速度で車道を走った。幅員が狭くなった場所で港湾輸送の大型トラックに頻繁に抜かされるのは怖いが、極端に狭くもなかったのでどうにかなった。門司までは大体追い風に助けられ、30分程度で着いた。門司港駅あたりで空が白んできた。駅とその周辺の大正風のデザインが素敵であった。初めて来たなぁ、門司港駅。
ここから関門海峡を抜けて本州の下関に渡るにあたっては、若布刈(めかり)公園の中にある関門海峡トンネルの人道を利用するほかない。人道は車道と別のトンネルになっている。一度やってみたかったんだよね。本州←→九州を自転車で走るってのを。一昨日〜昨日で本州〜四国も渡ったし。
入り口のエレベーターには自転車ごと載せることができる。地下へゆっくりと下っていった。が、鎖がジャリジャリ鳴る音がしたり、停止するときに全体がガクンと揺れたりしてちょっと不安になった。開通したのが1958年だからなぁ。もう設備が老朽化してるんじゃなかろうか。
エレベータホールには休憩所のようなスペースと椅子があり、ホームレスが住んでいた。
人道は1kmもない程度で、中央に最深部がある。トンネルなので、スピードメータを見て今の登り/下りを判断する程度しかできない。登りを平地のように錯覚した。変な気分。
下関の地上出口で金を20円払い空を見あげると、日の出とともに風花が舞っていた。この小雪があとであんなことになろうとは、この時点では予想していなかったのだ(予告)。
トンネルの警備員とちょっと話したところ、「今なら唐戸の市場で朝飯にありつけるぞ」とのこと。下関の朝市は有名だ。市場でそのテの人間が食べている朝飯といえば不味いはずがない。絶対安くて美味いはずだ。というわけで、下関駅へ向かいつつ途中唐戸へ寄ることにした。
向かい風に悩まされながら市場到着。市場の様子をカメラに収め、早速2階の食堂に行った。食堂はおばちゃん&美人4人娘がやっていた。他の誰にもメニューが出てこないのに、私にだけ出てきた。常連じゃないのは私だけか。…まあそうだよな。ふぐ刺し1100円(十分な量あった)、生うにが箱ごとついた定食1500円、はまちの刺身定食800円、ふぐの唐揚げ定食750円、ふぐ・はまち等いろいろ入った定食1500円。やっぱり市場の食堂、そこで入荷した海の幸を通常ではあり得ない値段で調理している。とらふぐ刺身1100円とかウニ箱ごと1500円なんて常識的におかしいよな、絶対(笑) こんど下関に行く人がいたら、ここで是非食べてみるといい。
私はふぐの唐揚げ定食にした。フグのしっぽの方をひれ付きのまま揚げたものだ。他で食べたことがないのでどうおいしいとかは評価しにくいが、おいしかったことは間違いない。食べながら周囲を見てみると、朝になって仕事の終わった漁師と市場関係者はもう酒を飲んでいる。漁業はやっぱり男の職場なのだろうが、あのおっさん連中が食堂の若い女店員に向ける視線からかける言葉まで、なんというかセクハラそのもの。
なめ回すように店員を見たあと呼びつけて、「(自分に近づかないと聞こえないようにわざと、ひそひそ声で)ねぇおしぼりちょうだい」とか注文したり。
常連は大事だし、ちょっとセクハラなくらいは海の男の甲斐性なのかもしれんが…うーん(苦笑)。
てっきり店員の方も慣れていてうまく受け流せるのかと思ったら実はそうでもなく、あからさまに嫌な顔をする娘もいた。そんな初々しさが逆によかったりしてな。…結局俺もセクハラ親父と同レベルですか。そうですか。そうかもな。ごめんなさい。(ぉ
私より前にきていた京大生の一群は、「旅行中の大学生が来た」ということでおばさん・おじさんの話題の的となっていた。「どこから来たの? 運転は気をつけろよ」「昨日はどこ泊まった?」「どこの大学?」などといろいろ質問され、珍しがられていたようだ。私もなんか聞かれるかと思ったが、会計のとき(さっき京大生に話しかけまくっていた)隣の席のおじさんに小さく一言「がんばれよ」と言われた。私は新参者の市場関係者と間違われたらしい。おいおい。もっと旅行者らしい格好か、大学生らしい派手な格好で行けばよかったんですかね。そういえば初めて理研に行った日は運送屋と間違われたっけ…(笑)
今日の走行20km程度。
3/6(その2)雪の山陰、吹雪の中国山地
風花の中、下関駅に到着。ふぐのひれ酒を買って、8:16発の山陰本線に乗った。今日はずっと列車の旅だ。日本海岸の山陰本線をずっと江津まで乗り、そこから三江線で内陸に入る。今日の目的地は三江線の終点、山間の中都市、三次である。
下関から小串(こぐし)までは、キハ40+47+47の3連。入ってくるときは48+48+47+47の4連だったのでちょっと期待したのだが、折り返すときにつけかえられたらしい。ま、どのみち私の好きな40系列なので満足満足。海岸線を見ているうちに小串に着いた。日本海岸は寒い。すごく寒い。昨日までの瀬戸内も寒いような気がしていたが、勘違いだったようだ。全体的に寒波が来ているだけで、瀬戸内と日本海・中国山地の温度差は全然変わってないのね。震えながら待っていると、キハ40単行がやってきてもう1両のキハ40を増結、2両ワンマンの長門市ゆきとなった。
海岸線は線路ぎりぎりまで迫るところも多い。空は場所によって晴れたり雪だったりするが、日本海はいつ見てもしけていた。沖の方は真っ暗で波が高い。萩のようにちょっと山側に入るともう、うっすら積雪するぐらいに降っていた。
雪の日本海岸をキハ40で走るなんて、なんだか五能線で走ってるみたいだ。
乗客は地元の高校生と婆さんが中心であり、全席埋まるぐらいだった。婆さん連中は運転士に「○○駅で降りるから、今のうちに切符見といてもらえる?」とか「必ず○○駅で降ろしてくださいねぇ」とか、「このお菓子あげるから食べなさい」とか言っている。お菓子あげるってなぁ、おい(笑) ま、婆さんにとっちゃ30代の運転士なんて子供みたいなものなんだろうけど。
益田でキハ120単行のレールバスに乗りつぐ。ロングシート(通勤電車仕様)の車両で、軽快に東へ走っていった。
終点の浜田ではちょっと時間があり、街をしばらくぶらついた。長門市、益田、浜田と来るに従って街の規模は大きくなってくる。浜田では雪が強さを増してきた。傘が欲しいほどである。持って来なかったけれど。
浜田からは出雲市行きのキハ126 2連。キハ58+28代替のアクアライナー編成だ。片っ端から着メロを大音量で再生し続けるギャル2人組がうざいが、着メロが鳴るたびにびくっとして自分の電話を確認する周囲の人々が面白かったのでよしとしよう。
江津で降り、狭い跨線橋を渡って三江線ホームへ急ぐ。写真を映そうかと思ったが、浜田で街を出歩いて以来バッテリーが上がってしまった。雪のせいもあって外気がとても冷たいからだ。リチウムイオン電池の化学反応速度は、温度が十数度下がるだけでも意外と低下し、起電力はぐんと落ちる。アレニウスの式ですよ。あれはどうやって証明するんだっけなぁ。…まぁ今それはともかく乗りかえだ。
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