3/5しまなみ海道2日目。 峠、海、風、ミカン畑。
2日目:生口島→大三島一周→伯方島→大島→今治→松山→道後温泉→松山港(→小倉 フェリー) |
朝ユースを早く出ようかと思っていたのだが、まぁ時間もあるし、昨日もう1人来た女の子を待ってから出ることにした。朝食のときに話したところ、京都から尾道まで輪行で、昨日は私より少し早くしまなみを渡ってきたとのこと。今日は松山の手前まで行くらしいのである。私といっしょだ。ちなみに大学の自転車部に所属していて、次の春合宿では四国の剣山スーパー林道(!!)に行くとのこと。この時期は雪も落石もある70km以上のダート林道だ。シビアさでいったら中津川林道の比じゃない。これを1日で走破する予定だそうだ。やりすぎ。マジで。つーか無理だと思うぞ。(笑)
なんとなくまたユースのペアレントの爺さんと話す。ユースホステルを囲む一群の建物は全部1人で建てた(!)とのこと。弓道場、浴場、家族用の2階建の棟など。すごすぎる。1人で家建てる人は始めて見たよ。↑に書いた「ボロそうな」を「手作り感に溢れる」に訂正しておくとしよう。10時に3人そろったので記念写真を撮り、3人とも自転車で出発。同室だった男性はレンタサイクルで、生口島の平山郁夫美術館に寄ってから今治へ行くとのこと。残りの2人はぼちぼち次の大三島へと走りはじめた。
大三島への橋は支柱が先細りになっている形で、支柱の直下で手を叩くとその音が上でどんどん共鳴した結果、ばらばらに反射されて返ってくるという変わった現象が起こる。日光の鳴き龍とかと同じ原理だそうな。
東の太陽に映える瀬戸内海はとてもいい感じだ。風は相変わらずなので15km/hぐらいでのろのろと渡った。結局ユースから1時間ぐらいかけて橋のたもとまで来て、ここで京都の彼女ともお別れ。私はまっすぐしまなみを走らず、今日はこの大三島を走り尽くしてやろうと計画しているからだ。
内陸に入って、目指すは大山祇(おおやまずみ)神社。瀬戸内海の小島にあるこの神社は、四国はもちろん日本の総鎮守として一部で有名らしい。私は半年前ぐらいまで知らなかったけど。
しかも貴重な武具の所蔵が非常に多く、今日本で重要文化財・国宝に指定されている武具の8割がこの小島の神社に所蔵されているのだ。びっくりだよな。
島の中の方だからどうせ山を登るんだろうな…とか漠然と考えていたのだが、やはり始まった峠越え。しかも向かい風でめちゃくちゃきつい。11km/hぐらいしか出ない。えっちらおっちらとどうにか越え、神社に自転車を止めて境内へ。まだ元気だ。
幽玄な雰囲気の楠の古木(樹齢2000年を越えるものもある)の中に侘む社は、趣があって好ましい。以前行った雨の高千穂神社にはかなわないと思ったが。賽銭を入れて1分ぐらい祈る。昔はそんなにお願いすることなんてなかったんだけどな。いつの間にそんなに神頼みが増えたんだろう。その後国宝などの展示館へと散歩。入場料800円は高いが、なんか日本の宝物に指定された武具の8割とか言われたら見にいくしかないよね…(そうか?)
宝物の多くには非常に有名な人が奉納したような説明がついていた。斉明天皇、平清盛、源義経、弁慶、源頼朝など。出てくるものがことごとくそんななので、途中で「本当かよ?」と疑いたくなったりしたのだが、まぁ嘘じゃないらしい。説明書きを見てひとしきり感心したあと、再び自転車に乗って港へ。港には鳥居や朱塗りの波止場があり、大山祇神社を意識したらしい。
今日はこれから島の南側をぐるっと一回りしたあと、次の伯方島へと向かう予定である。港を離れると早速始まる峠道。きついきつい。ま、島なんて山の頭が飛び出してる所だからなぁ。山道が連続することなんて分かってますけどな。向かい風にさらに体力を削がれながら海の見える高台へと登る。
周囲は全部レモンなどの柑橘類の果樹園である。山の急斜面を利用し収穫をモノレールで行う典型的な瀬戸内の風景だ(写真)。海沿いにはまだ辿りつかない。まだ登ってる〜。どんどん登ってまた下り、やっと海がまた見えてきた。だが西側の海岸線は今までと違い、海に肉迫した崖の上のワインディングルートであった。追い風だと非常に気持ちよく高速コーナーを飛ばしていける。とはいえ、今日は風が非常に強い。曲がった瞬間に強風に煽られて転落なんかしたらかなわないので、30km/h程度で安全運転。
1時過ぎ、西南の端に到着した。ここの海岸沿いにある「大三島ふるさと憩いの家」は、木造校舎の小学校をそのまま使っている。以前某番組でプロモーションビデオの撮影場所として使われたこともあり(分かった人減点(ぉぃ)、
一度訪ねてみたかった所である。着いてみると工事業者がたくさん入っており、色々と増改築中のようであった。堂々と入っていくのは憚(はばか)られたので、入口に自転車を止めてちょこっと撮影してきた。陽光が眩しく海に映えており、その先には伯方島、大島としまなみ海道が見わたせる。もしこんな綺麗でのんびりした風景の中で、木造校舎の学校に通いながら育ってたら、私はもっと違う大人になれてたんだろうか(笑)。うーん。いい所だ。
さて、そろそろ寄り道している暇がなくなってきた。もうしまなみ海道に戻らないと日没までに松山に辿り着けなくなってしまう。伯方島へ渡る口へ走り出すと、案の定つづれ折りの急坂が出現。しかも思いっきり向かい風だ。あーもう。悪態をつきながら登るしかない。道はさっきから2車線の安定した路面であった。だが、やっと下りに転じたかと思ったところで幅員減少の標識が。そしてしょぼい1車線になって速度が全然出せなくなりましたよ。嫌がらせ道路だな(^^;。でもまぁ景色だけは全くもって文句なしだ。この日射しとこの海、来て本当によかったと思う。
海へ降りてきてからしばらくは追い風の平坦なワインディングで、気分良くかけ抜けた。なにしろ注意報が出たほどの強風、追い風になると漕がなくても進む。このまましまなみまで戻れればいいけど、そううまくいくはずもなくまた登坂開始。降りたところで歩道への分岐点があり、そこからさらに峠を1つ越えたところで橋に合流した。大三島だけで峠を6つ、距離にして30kmは(しまなみ海道に加えて)走ったことになる。
ここから先、夜に松山からフェリーに乗るという日程があるので、殘りの二島は寄り道せずにしまなみ海道で通過する。伯方島は例の、「伯方の塩」で有名な島。コンビニに寄ってあっという間に通過。しまなみ海道は5km程度かすっているだけである。
次の大島は十数km島内を走った。大島は石の名産地で、墓石や記念碑の業者が散見された。この島内もひたすらインターバルトレーニングのように峠が連続するハードな道のりだった。3台ほどマウンテンバイクを抜いたが、みんな結構辛かっただろうと思う。
最後の橋は、しまなみ海道最長の来島海峡大橋だ。途中の小島に支柱を建てて、一気に四国まで渡っていく。行き交う船や、島々の風景は心を癒してくれるものだったのだが、目下の風との戦いには及ばなかった。とにかくもう進まないったら、たら。やっと渡り切った四国の入口で、朝ユースで別れた同室の友人が休憩しているのを発見。いくらレンタサイクルのママチャリでも、私が大三島で神社を見たり峠を延々越えたりしてロスしていた時間ほど長くは遅れなかったようだ。休憩所で会った、マウンテンバイクのおじさん(MTBは2002年ワールドカップ限定モデル:今治在住)に2人連れられ、しまなみ海道の四国側拠点である糸山サイクリングセンターへ向かった。ときに16時。
私がこれから松山まで向かうつもりだ、と言うとそのおじさんとサイクリングセンターの職員の両方に「やめた方がいい」と説得された(笑)。理由としては、「排気ガスが多い」「路肩が荒れている」「40km以上あって3時間はかかる→日が暮れてしまう(今日は18:09日没)」など。それを聞いて私も心が揺らいだ。…でも私もあまのじゃくなので、「じゃあ途中まで行って疲れたら電車に乗ります」と言って松山への道へ強行した。
↑をあとで東京人の感覚に翻訳してみるとこんな感じ。
武蔵丘陵の森林公園から荒川を東京まで延々と走ったあげく16時に渋谷にたどり着いた田舎のサイクリストが、
「じゃあ僕これから本厚木まで246を走ります」とかほざき始めたときに我々がするだろう反応というか。
いいから電車乗ればいいんですけどね。どうも素直じゃなくて。
松山への道は途中まで県道、その後国道196号に入る。路肩はそれほど良くないけれど、さいたまほど非道くはないと言っておこう。(笑) だいたい追い風になったので、漕いでさえいれば平地で30km/hを越える。今治←→松山 45km, どこで切り上げようかと考えながら走った。今治から18km程度の伊予北条が適当かな。道は大体平坦で、西陽の綺麗なシーサイドラインであった。ま、シーサイドラインは昨日今日で飽きるほど走ったからね。それほど感動しなくなっている。それなりに大型車が多いため、確かに排気ガスばかり吸ってしまった。
北条も近くなってきた浅海(あさなみ)という海岸で、すぐ左に予讃本線の駅を見つけた。よし、ここで切り上げよう。17:23, 朝からの走行距離97km。
43分発の各駅停車松山行きに自転車を積んで松山まで輪行した。四国の各駅停車のお約束で、特急に抜かれるときは15分ぐらい余裕で待ち合わせする羽目になる。冷遇されすぎだ。
途中から可愛い女子高生と可愛くないの(失礼)の2人組が乗ってきて、恋愛話に花を咲かせていた。ま、可愛いといっても派手さはなくて、言っちゃ悪いが芋ねーちゃんなんだけど。
可愛い方曰く、(標準語訳)「私の彼ね、どうも照れてるみたいで私のこと『好き』って言葉にしてくれないのー」
可愛くない方はぎこちない笑い顔で「あんたの彼のことなんか知らないって。勝手にのろけてれば? てゆーか死ね」という気持ちを露わにしつつ、けれども友達の立場上そうとも言えないので冴えない相槌を打っていた。くそぅ。青春だよー。溜息。
松山で降りると、またユースの彼が先を歩いているではないか。実は私と同じ電車に乗っていたとのこと。今日は道後温泉のユースに泊まることにしたらしい。せっかくなので一緒に路面電車で道後温泉へ向かう。松山や高知の市電は古い車両がずっと現役で走っているのがいい雰囲気だ。すばらしい。
道後温泉で一番有名なのが、なにより道後温泉本館という昔ながらの施設だ。300円払って一番安い銭湯に入る。もっと高いコースもあるのだが、お茶やらお菓子やらのサービスも休憩も必要ないので、これで十分。今日一日の汗と顔の砂塵を流し、湯に漬かる。ふぁー。そうそう。この一瞬のためにここまでやって来たんだよー。くつろいで数分、なんだか大変な勢いで脈拍が上がってきた。最初は「さすが道後温泉、温浴効果絶大だな」とか思っていたのだが、よく考えたら違った。昼飯を食うの忘れてました(ぉぃ。そのせいで急速にのぼせてたんだ。休みやすみ温まって、本館を出たのが20:10。ここでユース同室の彼とは本当にお別れとなった。
港へ急げ!
制限時間40分…っておいおい(汗 |
さて! 今夜は松山観光港21:50発の夜行フェリーで九州の小倉へ旅立つ計画になっている。乗船手続き終了はその1時間前、20:55(本当は20:50だが勘違いしていた)。あと40分で港まで行かないといけない。風呂上がりの気持ちよい体でとりあえず松山市中心部をさっと抜ける。5km経過、現在20:25。ここまで平均時速20kmか。観光港までは私が地図見て計算した見積もりだと7kmのはず。25分あればまぁ、着くだろう。そう考えて途中見つけた弁当屋へ。弁当を注文したら出てくるまでに5分かかった。現在20:30。弁当屋の店員に港の場所を確認すると「国道へ出て、次の消防署の角を曲がって、ずーーーーーーーーーーっとまーっすぐですね。」とのこと。なんか「ずーーっと」の伸ばし方が気になるが、礼を言って教えられた道を進んだ。
消防署の角を曲がって青い道路看板を見る…と。「↑松山観光港 11km」(!!!) なんだってー! おいおいおい!! あと25分弱で知らない道11kmは無理だって! 途中信号があったりすると平均27km/hというのはきついですわ。荷物積んでるし。もう100km走ってるし。飯食ってないし。蒼ざめる私。だが走るしかない。車も多いので、注意しながら飛ばせる限り飛ばしていく。すぐに体が悲鳴を上げた。そ…そういえば道後温泉で汗流してから水分補給してなかったよ(笑)。もう市街を出てしまったので補給ポイントまでが長い。1kmぐらいしたところでビデオ屋を発見、自販機でGokuriを補給する。途中登坂が始まったときはどうしようかと思った。残り8km, まだ先がある。途中で右折し、観光港への道へ。港に近づくともうほとんど真っ暗である。あと何分だろう。時計を見ている時間ももどかしい。残り5km, 4km, 3km…電柱とセンターラインが飛びすさっていく。残り2kmを過ぎて幅員減少。切り通しに入る。ほどなくしてトンネルが現れた。このトンネルを抜けた先が港だ。いつもは嫌いなトンネルだが、夜は明るい。飛び出しの心配もない。残り1536m直線, ファイナルスプリントだ。あり得ないスピードで走り切り、出口でしっかり減速。荷物満載でかっ飛んでいる自転車もレバーを軽く握れば安全に減速してくれるShimano XTRはやはり素晴らしい(でも強く握るとロックするのは困りものだ(^^;;)。観光港のターミナルビルに到着したのは20:56, 当初予定の1分遅れであった。あー。どうにか間にあったよ。自転車から降りたら腰と太ももが同時に攣(つ)った。おいおい。
船にはおでんや生ビールの屋台、風呂、売店など色々揃っていて、中距離フェリーとしてはすばらしい。が、そんなものには目もくれずに船室へ直行し、さっきの弁当屋で買った飯をかきこんだ。ちょっと旅行記を書いたけれど、あっという間に激しい眠気に襲われ意識はそれっきり。
今日の走行120km。
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