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目次
どうやっていこう
秘境中津峡
雨の中津川林道
野辺山での観測
パラボラに登ってみよう

パラボラにのぼってみよう!!

帰り支度を済ませて食堂へ。例の手抜きご飯を食べる。みんな力尽きて起きられないようだ。
食べながら一人で考えてみる。去年までの私だったら、たとえ一週間でも東京の生活・環境は捨てられなかったと思う。旅行は好きだけれど、やはり正直、長い間東京を離れて平気でなんていられないと思っていた。だが、ここにきてみて、研究のためだったらそのぐらいは簡単に捨てられるような気がしている。情報や物流の便利さ、趣味の2つ3つぐらいどうでもいいと思えるくらい、研究に打ち込むというのは楽しいものなのかも。(…とはいっても近くに本屋がないのは苦しいけど)

さてさて。旅装をまとめて閉講式を終えて、一般公開のポスターももらった。この後帰りがけに、尖石遺跡だけでも寄りたいな、などと考えていると、教官が「それじゃあこのあと電車の時間まで、ミリ波干渉計と45m電波望遠鏡の中をもう少し紹介しましょう」と言い始めた。 これはまたとないチャンスである。なにしろ、45m電波望遠鏡には、パラボラアンテナの中までのぼらせてくれるそうなのである。これは本当に、二度とできない経験だろう! たとえ小海線に乗り遅れて尖石に行けなくなっても、それはそれであきらめられる(尖石行きのバスは、一日3本しか出ないのだ)。

そういうわけで、研究員の人の後についていそいそと見学にスタート。ひなたで干渉計の説明を受けていると、徹夜+飲み会明けの頭には日射しがきつい。まぶしい太陽を見上げて、ふと横を向くと、無数の花とアンテナが私と同じように太陽を見上げている。黄色や赤の花畑の中には「ヘリオグラフ」という高さ1.5mぐらいの多数のアンテナ群があり、太陽表面を観測しているのだ。太陽を見ているため、花とアンテナは同じ向きなのだ。
アンテナが花にとけ込んでいる風景というのも、ほほえましいというかシュールというか。

干渉計について説明を受けて、観測棟を見た。ここも45mといっしょで、手作り感たっぷりのハードウェアである。なぜか、コンピュータルームの一角に視力検査用の紙が貼ってあったりして笑える。やっぱりここの所員の人も、一年に一回ぐらいは集団定期検診とかあるのかねぇ。

そして、45m望遠鏡へ。いま、望遠鏡は真上(デフォルト)を向いている。この位置に望遠鏡があるときだけ、我々はパラボラの鏡面のところまで登っていくことができるのだ。
望遠鏡の本体には階段がついている。当然本体は回転するから、地面から少し上の位置から始まる階段である。階段と空中の足場のような通路が、ずっと望遠鏡の上まで続いている。そこをゆっくりと登っていった。通路は高い。見下ろすと目がくらみそうである。アンテナのの直径だけで45mもあるのだ。本体の高さは50m近くはあるだろう。ちゃんと板を渡せばいいのに、なぜか通路の床がメッシュ状になっているのがまた怖い。50m下の芝生まですけすけである。 っていうかさ、たまに20cmぐらい通路が空中で切れてるんだよね。可動部間を渡っていけるようになっているから、その間の部分らしいのだけれど。これは、想像に難くないと思うけど、怖いよ?(笑)
パラボラの骨組みなどを作るときには命綱一本で、とび職が作ったらしい。怖いなんてもんじゃないなぁ。
眼下には、ずっと八ヶ岳まで続く野辺山原。電波ヘリオグラフがゴミのように見える。見下ろすと嫌なので、なるべく遠くの景色を眺めながら登っていく。通路からは望遠鏡の駆動部がよく見える。望遠鏡の上下方向(Elevation)を決めるギア、微妙な動きを制御するマスターコリメータなどなど。そうそう、建設20年も経つと望遠鏡の駆動用レールが上下にゆがんだり、望遠鏡自体が地面に沈み込んで傾いたり、何トンもの水が溜まったり、いろいろなところに装置のガタがくるそうである。実際、傾いた望遠鏡を元に戻すのは尋常な作業ではないので、逆に方向制御用のコリメータを傾いた望遠鏡に合わせて傾けたりしているらしい。

ここから梯子で登って、

ここの穴に出る!!
そんなこんなで、パラボラ整備用の穴の入り口に到着した。ここからは梯子で鏡面まで登ることができる。研究員の人も、ここまでくる機会は滅多に無いという。ちょうどカメラを持ってきたので、パラボラの鏡面に頭を出した状態で、手を伸ばして自分の写真を撮ってみようかと思った。地上50mで自分にカメラを向けている姿というのははっきりいってバカっぽいけどね(写真ができてから見てみたら、本当にバカっぽかったので載せるのは自粛しました(笑))。

梯子から見上げる空。

穴から出てパラボラ中心方向を見る。

上方向、副鏡と支柱。

パラボラ直下の空中通路。

通路から八ヶ岳方向を見る。

アンテナを縦方向に動かすギア。
眼下にはヘリオグラフ。
梯子を登りながら見上げる空は、まさに「蒼穹」という感じの深い青空。雲が絵のように漂う、幾分現実味に欠ける空だ。顔を出すと、一面、白い。正確な放物面だから、空と白しか見えない。他にはポールが3本あり、放物面で反射した電波をメインシャフトの方へ反射し返す「副鏡」を支えている。整備員は、例の「忍者靴」を履いてこの放物面を歩き、ポールについた剥き出しの梯子をさらに数メートル登って副鏡の整備をするらしい。梯子を踏み外すなんてことはあってはならないんだろうな。なにしろ0.1mm以下のオーダーの精密さで作ってある鏡面に人が落ちたりしたら、もう使い物にならなくなってしまうだろうから。以前、誰かがメインシャフトにスリッパを落としただけで、歪みが起こって大ごとになったらしい。まして人が落ちたりしたら…(汗

で、結局、小海線の時間は過ぎてしまった。我々の班で、島根に帰らなければならない人が一人やむを得ず途中で帰っていったが。
次の小海線は2時間後。先生が駅まで自動車で送ってくれるというので、結局自転車を畳んで積載して、送っていただいた。野辺山駅で青春18きっぷを購入。…結局こうなっちゃうのね。
B班の残り2人と、中央線まで一緒に帰ることになった。私は国分寺まで、あとの2人は八王子, 新宿までなので、ちょうどいい。 …と駅の掲示を見ると、30分前に増発列車が出ているではないか。急いで乗っていったん清里へ。3人で急いで清里ユースホステルに行き、名物のソフトクリームを作ってもらった。もともと清泉寮のソフトクリームが起源なのだろうが、このあたりのソフトクリームは非常に牛乳の味が濃くて美味しい。ちなみに私が普段気に入っているのは池袋西武にある「Queen Alice」のソフトクリームなのだが(関係ねーな)、これのさっぱりした甘さに慣れている身としてはなかなか、しつこいほどの濃厚さであった。30分後に小海線に乗り込み、小淵沢乗り換えで中央線の立川行きに。あとはみんなで別々の弁当をとりかえっこしながら食べたりしているうちに着いた。なんつーか、一日目に比べて平和なこと書いてるなぁ。普通に旅行していると気づかないんだが、野辺山から山梨市あたりまで、鉄道もすごい勢いで坂を下っているんだよね。
自転車で延々と登った身としては、なんかすごく「もったいない」。高低差1300m、せっかく貯金した位置エネルギーだったんだけどね。 もし甲州街道に笹子峠や大垂水峠がなくて、自転車が壊れてなかったら、八ヶ岳から東京までさぞ快適だろう。 まあ、それはいいや。最終日にしてやっと心休まる気分だったし。友達と一緒で楽しかったし。身の危険なんて塵ほども感じなかったし。当たり前だけど。

そんな感じで、ロングツーリングのはずだった日程はあっさりと終わってしまったのだった。

さいごに

なんだか最後は駄文一直線でしたなぁ。長々読んでくれた人、どうもありがとうございました。
今回撮った写真の中できれいなものを壁紙にしてみました。
気に入ったら使ってみてくださいな。


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<10mミリ波干渉計と八ヶ岳>

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<45m電波望遠鏡と電波ヘリオグラフ>
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SHIMURA Harutoki <tt67136(あっと)mail.ecc.u-tokyo.ac.jp>

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