9/21 富良野→狩勝峠→新得 91 km
6日目。地図中のコースの色は青:15km/h→赤40km/hに対応します。 |
朝起きるとだいぶだるい。昨日がっつり登ったからだろうか。朝食のバイキングでテンションを上げる。鏡を見るとサングラスでだいぶパンダみたいになっているので、黒くなっているところだけSPF50を塗って全体の平均化を試みることにする。
今日の日程は狩勝峠を越えて十勝平野に入ること。ただそれだけだ。そんなことに1日、と思われるかもしれないが、たぶんそれで1日いっぱいかかるはず。
ユースのペアレント夫婦は最後まで勧待してくれ、私は気待ちよく出発した。いや〜、いつ波動なんとかのセミナーが始まるかと期待に胸をふくらませ不安におののいていたけど、結果的には大変いい宿でした。夕食中に純チタンのフライパンの話とか、例の波動なんたら研究所が伊豆の下田にあるとか、原発で作られた電気は水力のと比べて体に悪いとか言ってたのはまあ忘れよう。あ、それから私は上記ユースや、関係団体様を中傷するつもりは一切ありませんよ。宗教なんか下手に敵にまわしたら大変だ。
さて、まず国道に出るまでに山越えがある(ちなみにこの辺一帯は実は東大の演習林だ)。5%ぐらいの坂をてれてれと走っているとさっきユースで一緒だったライダーさんに抜かれた。ぐるっと走って今日は層雲峡だそうだ。それもいいな。エンジンのついた乗り物で走りまわるのも楽しかろう。
静かな山を登って下ると東川。ここから三の山峠通称“樹海峠(467m)”を越え、その後本命の狩勝峠(644m)に挑むわけだ。
この辺は「樹海中学校」とか「樹海西小学校」とかいろいろあって笑える。バス停に「ここは樹海」って書いてあった。他のバス停には「ここは開拓地」ってのもあった。なんて北海道らしい。と思っていたら「東川かえで」っていうバス停が。人?(ちなみに秋田県には「井川さくら」っていう駅が。)
三の山峠は11連高速コーナー。スピードが出ない私には何も危険に思えないのだが、過去にここで何人も事故死しているらしい。北海道で事故死する人の多くは、大型バイクでツーリング中のオッサンだそうだ(北海道警調べ)。だいたいコーナーにオーバースピードで突っ込んで後輪すべらせ対抗車線へ、で轢かれると。私も轢かれなかったとはいえ一回崖に突っ込んだことあるからなあ…。私の末路がバイクで事故とかじゃないといいけれど。
峠を登り切って下り、南富良野の市街へ。ここ幾寅(いくとら)は映画「鉄道員」のロケ地(幌舞 と作品中にはある)。もう公開から7年たったが、聖地巡礼の人はいまだにひきも切らないようだ。踏切にさしかかると警報機が鳴りはじめ、キハ40 2連が通っていった。ナイスタイミング。構内には撮影に使用された腕木式信号機、駅前には使用されたセットがある。駅舎内は資料館になっている。駅前の偽キハ12(中はキハ40)も見て来た。別にキハ40でもいいのに。
信号機のあたりをうろついていたら、遠くからオバサンが「あと2, 3分で向こうから列車が来るから、木々の間から現れる感じで写真を撮るといいわよ!」と細かくアングルなどを指示してきた。なんでそんなに。ま、いい写真は撮れたかな(↓)。
12時も過ぎた。狩勝越えの前に昼飯タイムだな。この街から2kmほど山に入ったところに、「にわとり牧場」というオムライスとピザのお店があるそうだ。明るい樹海の中を登っていくが、延々と同じ景色が続くばかりで牧場などなさそうだ。
これは間違えたな、ともう一本の道を行くと当たり。
ツーリングマップルを持ってる皆さん、2本の道の真ん中にレストランマークが書いてありますが、右です。お間違えなく(追記:踏切の向こうにちゃんと道標が出ているそうです。お見逃しなきよう)。
店は鶏の走り回る庭の中にある素敵な木造の建物。内装もとにかく手がこんでいていい感じだ。木とビー玉でおもちゃや小物を作ったりもしている方が手がけているようで、テーブルのメ二ューや注意書きからトイレのドアまで全部木工で綺麗に面取りされている。
すごい。オムライスは普通のと違って卵がしっとりしている。どうやって作るのかしら。スライスしたゆで卵やプチトマトが添えてあるのも心憎い。うむ。おいしいです。グレープフルーツジュースもしぼって作ったもののようであった。
デザ一トはブルーべリーシャーべットと焼プリン。この2つを載せるための手造りの木のトレイも可愛い。プリンは格別だった。全然違う。卵の存在感がしっかりとそこにはあって、大満足であった。
自走できる乗り物であの辺に行く人は是非。オススメ。駅から歩くのはさすがに遠いかなー。
エネルギー満タンで狩勝へ。道はしばらくゆるい勾配で続き、その後5%ぐらいになった。ま、どうということもない。これなら昨日の麓郷の手前の山の方がきつい。一緒に走りに行くことの多いUTMCの連中なら「これは平地」とか言いつつ「♪丘を越え行こうよ〜」とかロずさみながら越えられるね。……本当かしら。周囲は樹海、誰も見てない。試してみようか。しぱらく歌いながら登板してみたが、いろんな動物の鳴き声が出てくるあたりで息が切れた。やっぱ無理か。まあ鼻歌を鼻ずさむ(?)ぐらいの勢いで越えよう。
峠近くは植生も薄く、関東でいう標高1200 mぐらいの景色に感じられる。登り切るといきなり突風が。山の間を吹き抜ける天然のビル風だ。荷物込みで30kg以上の自転車が、私が降りると風でやすやすとあおられ転倒する。
寒いしあまりゆっくりしていたくないのですぐ下り始めた。
下りは50km/h巡航で抜けられる高速コーナーしかないのだが、工事中でアスファルトをはがしたような、縦にずっと細い溝が入ったような舗装になっている区間が峠直後の覆道を含む2ヶ所あり、自転車のようにタイヤが細いと細かくハンドルを取られるのが怖い。この舗装は断差とは違って転ぶことはまずないけれども。また、たまに順風になると一瞬で60まで加速したりする。
峠を下った先は新得(しんとく)で、私が今回泊まるのはそこから7kmほど入った屈足(くったり)という地区の公営無料ライダーハウスである。市街の手前に「豚丼・とんかつ」と書いた店があった。こういうのは店があるところで食べておかないと、下手したら今日の夕食・明日の朝食とまとめて食いそびれてしまうからな。初山別で危うくそうなりかけたし。
ということで止まると、横にSLが。横目で見て、「あ一D51か」とスルーしようとすると…ん? あの煙突から流線形に続くラインは! 初期生産型、通称「ナメクジ」ではな…
…あーげふんげふん。そんなうんちくはつゆ知らぬ私は店に入って豚丼を注文したのですよ。豚丼といっても松屋のうす切りバラ肉を想像するなかれ。しょう油味の染みた厚切り肉が載った十勝名物だ。ここも店内は綺麗で好感触、飯もうまかった。
ここから屈足は小さな山越えを一発、今日も美しい夕映えの空を見ながら市街へ下りてゆく。
幸いセイコーマートもあって、明日の朝食も確保できた。ライダーハウスは公園の一角にあって無料なのにとても清潔。炒事場やきれいなトイレもあって文句なし。ただし、女性部屋がないので一人旅の女性はやめた方がいいかもしれない(宿帳みるとけっこう来てるが)。
今日の宿泊客はBMWのちょいワルおやじ(でも浮気してない証拠に毎晩宿で同室のオッサン達の写真を撮って奥さんに提出するらしい)と32歳無職、あと最強伝説黒沢みたいなオッサン(ああまた人を敵にまわすよーな紹介を…すんません)。ひとしきりみんなでダべったあと、夜8時にはみんな寝てしまった。ビバ健康生活。でも健康のためってもチタンや変な文様の入った陶器は要らんぜよ。
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