9/20 旭川〜美瑛〜富良野 81 km
5日目。地図中のコースの色は青:15km/h→赤40km/hに対応します。 |
起きると、雨は小降りで時折やんでいた。レーダーも11時ぐらいにはあがりそうな感じなので、10:20頃出発した。うん、いや、けっこう降ってるな。ゴアテックス上下に頭にタオル巻いて、サングラスで雨滴を防ぐ。
側方視界の悪さと、どうしても足がびしょ濡れなのは仕方ないが。国道273号に入って富良野を目指す。
15kmくらい来たところで空は綺麗に晴れあがった。
台風ー過、丘を登っていくと輝く一面のひまわり畑が。美瑛(びえい)の丘である。見事な花畑だ。背筋に来るような感覚。すばらしい。みなさんも一度は目にした風景だろうか。
行ったことのある人も多いかな。花畑で知らないオッサンに
「なあ、富良野まで車で何分だい」と聞かれた。横柄なオッサンだ。
「私自転車だからよく分からないですが、40分くらいですね」と答えると、
「あれ、職員の人かと思った」
おい。もう。みんななんで俺を地元の人とか業者と間違えるの。下関でも漁師だと思われたし、初めて行った研究所でも守衛に「あー運送屋の人は受付通してね」とか言われるし。そんな顔スか、わたし。
花畑をひと通り歩いてから昼食をとりに美瑛市街へ。ツーリングマップルに載っていたトンカツの大きなお店「富川食堂」に行こうと市内を探しまわる。表の通りの建物は、全部似たようなスタイルで統一され、看板と並んで“1895”というように何年からやっている店か分かるようになっている。一本裏へ入ればそんなこともない。と、病院の向かいに9600形SLをみつけた。大正時代から1975年遠軽で引退するまで、127万km走り続けた車両を600万円ぐらい寄付を集めて買ってきたらしい。下手したら人の一生ぐらいの時間動いていたのだなあ。
食堂の名物のカツは250g, たいへんなボリュームである。キャべツまでは完食できず。もし食ったらおばさんが完食の舞を舞ってくれるなら頑張ったかも。味はまあ、手作りカツらしいというか。トン力ツ屋の、いろいろな素材からにじみ出た成分をもつ油のうまみというのが衣にしみてない。それが残念。
ふくれた腹で最終目的地、富良野の「ろくごうふらりんユースホステル」を目指す。ここから富良野までは比較的道幅の狭い山間の道路となる。路側帯は1mなく、荷物を積んで幅60cmぐらいの私の自転車はぎりぎり。その横を、都市間輸送の30tトレーラーとかが60-80km/hぐらいで抜いていく。超怖い。感覚的には、路駐がなくて眺めがいい環七ってところか(東京の人は分かるかな?)。左右を見ると、まるで「Windows XPのデフォルト壁紙」のような美しい緑の丘と青い空が広がっているのだが、そ、それどころじゃねえって。雨後の路面ウェットの下りかよおい。こわい〜。極めて真面目に運転し、上富良野へ。
途中の土産物屋に寄り、買い物をした。観光バスでやってきた中国人の集団がいて、店員もアルファベット表記の名札をつけて対応していた。レジの店員は男女並んでいて、一人が「OIKAWA」もう一人が「NAO」
…これは突っ込み待ちでスか店員さん。あ〜何か言いたいが言えない。まぁいいか。
ダメだ、これ以上トラックとせめぎあうのは耐えられないということで、ここからは道道の抜け道へ。富良野のいかにも観光地的な市街は通れなくなるが、特に惜しくもない。
道は田んぼの中をどこまでもまっすぐに貫いていく。これはいい景色だ。荒涼とした原野も悪くないが、豊穣な秋を感じる雄大な風景もまたよい。道は十数kmにわたって細かくアップダウンを繰り返しながら続く。交通量が少ないのでリラックスして走っていける。途中から今日泊まる麓郷(ろくごう)への分岐があり、そこから始まる山道へと私は入っていった。
山道は登り勾配6%。荷物満載の私にはけっこう骨のある坂に感じられる。森の中を登り切ると、展望が開けて美しい丘が!
夕暮れの空に畑の丘と数本の木々が映えるという構図はどうみても見事だ。走っていくその場所・その瞬間がすべて絵になりそうだ。でも絵も写真もこの360度の空をある画角で切り取ることしかできないのがとても惜しい。デジカメのシャッタを切って記録できる情報が、今見ているものに対してこんなに少ないなんて。
自己啓発セミナーの罠!?
麓郷地区は「北の国から」の撮影に使われた場所。“聖地巡礼”がしたい人はもうとっくに訪れただろうがいい場所だ。ユースホステルは富良野地区ならここがいい、という囗コミで選んだが、実際どうだろう。
若いペアレント夫婦はいい人そうで、赤ちゃんを背負った奥さんと受付しつつ喋って、部屋へ。非常に細やかな神経のもと手造リされたいい宿なのが分かる。
…でもこの違和感は何だ? どうも変だ。ふと廊下に目をやると、大量に自己啓発系の本がある。お茶は健康志向のルイボスティー…ん、聞いたことがないな。注意書きはほとんど“〜してくれてありがとう!!”という文面と伴に、「にこにこ笑った人」の絵が。部屋に入ると
- 「こころの宝島」
- 「守護霊との対話」
- 「こころの遊歩道」
- 「あるがままに生きる」
- 「農業と意識変換」
- 「地球環境と意識変換」」ほか
- 「丹羽免疫療法(SOD様作用食品の効果)」
- 「FALF(波動エネルギー調整製品)の紹介」
…えーと、
…宗教?
ちょっと待て。
エンゼルサチの会、形態波動エネルギー研究所…
…もしかして俺、だいぶやばい宗教(or 自己啓発)の施設に迷い込んだのか? おーいおい。明日まで逃げられんぞこれは。
よく見ると壁、階段、トイレ、ドア…およそ目につくところには全部この関係のものが貼ってある。純チタンが電磁波をなんたらで宇宙の3312種の波動がどうのというポンデライオンみたいな器具とか(20万円)、半導体から発振される不調和な波動を自然の法則に適った方向へエネルギー変換するカード(800円)とか。で、全部その系のグッズから絵から、そこらじゅうに設置されてる。こ、こえー。全部買ってるのか。信者なのか。ぐふう。こんな週刊誌の裏に載ってるような…。
まあ、自己啓発本とその関連の高価なグッズの賑売という、ビジネスモデルの実に分かりやすい宗教(商売?)だけど。
少し不安になって風呂に入った私は度肝を抜かれた。風品の壁一面がペンキで書いた色とりどりのニコニコマークで埋められていた。怖い…笑い男ぐらい嫌だ…浴槽内にもちゃんと波動がなんたらの純チタンプレートと原子の模様入り有田焼が。それぞれ数万円らしい。
ちなみに部屋の名も教義にもとづいて
- 「やさしい」
- 「にこやか」
- 「うれしい」
- 「あかるい」
- 「しあわせ」
- 「かわいい」
- 「かんしゃ」
- 「ゆかい」
- 「ありがとう」
- 「ほほえみ」
あー本物だここ。まずいな〜知らんかったなあ…(ここまで読んだ人は、上の旅人を迎えるメッセージーの画像をクリックして読んでみよう)
そしてこういう組織の末端の人ってものすご〜く善人ってことがけっこうあったりする話で。しかしそれに引きこまれてはならん。
さて、夕飯はバイキング。ペアレント手造りの十数種の料理が並び、どれもヘルシーで美味しい。満足。食堂の真ん中にチタンの何かがあるが、まあ忘れよう…
同席した長いおさげの大学院生の人は、聞けば北海道をフリーきっぷで鉄道旅行しているとのこと。しかも北見の方の石北本線(!)が好きらしい。試しに奥白滝や中越信号場の話(昨年の旅行記参照)などふってみるとついてくるついてくる。すごいなこの娘。
「もう私怖くて常紋では外見れないですよ〜」と彼女。解説すると、石北本線の建設当時囚人が動員されていたのだが、常紋トンネルというトンネルの工事が難航した折、多くの囚人を生きたまま壁に埋めて人身御供(ひとみごくう)としたのだ。実際白骨がトンネルから発見されており、今もそこを列車が通過しているのだ。それゆえ「出る」という噂も…というわけ。
しかし常紋の話をふってくるとは、私に初対面で「メタルスキンパニック MADOX-01」の話をしたお姉さんぐらいレアですな!(例が悪いけど…ほめてるのよ?) 鉄道好きで一人旅に出るような女の子は「鉄道員」の広末涼子ぐらいかと思ってましたよ。最近は「鉄子の旅」とかあるけど、あれは巻き込まれてるだけだし。というわけでこのページに出てくるしょうもない話題についてこれる方、何か掲示板に書いてって下さい。
ちなみにその人はフラットバーロードレーサー乗りであった。多摩川行こうとか言ってたのに連絡先渡しそびれたな。残念。
|