8/29 中標津〜知床 95km
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今回のルート。クリックでGoogle Mapsに飛びます。
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いやー、今日もひどい目にあいましたなぁ(とりあえず到着時の感想)。では一日を振り返ってみましょうか。
朝起きると結構明るい。窓を開けたら雨はあがっていた。お、これはいけるかもしれない。まだ6時だし、もう一度開陽台に行ってみようか、と自転車の服装に着替えてスタート。しかし少し行ったところで、その先が朝霧に覆われて見えなくなった。あーダメだこれは。次回来るときに期待しよう。
朝飯はさんまの塩焼き。いつも思うが、ユースホステル的なおざなりな食事でなくてすばらしい。そしてうまい。ご主人と奥さんと握手をして、出発した。
「博士になったら教えてくださいね」
と言われて微妙に現実を思い出しつつスタート。
さて、今日は根北峠という峠を越えて斜里の町の手前まで50km、さらにそこから知床へ25km走る予定だ。このルート、恐ろしいことに宿を出発するとコンビニは目的地までない(!)。自動販売機すら最初の50km弱は皆無、その後数箇所にある程度、というまったく恐ろしい過疎地域である。昨日それを見越して、中標津の温泉の帰りにアクエリアスと栗まんと、チョコパンを買っておいたのだ。これが今日の食料と水の全てである。さぁ、90km、がんばろうじゃん。
宿を出て最初の角を曲がるまで、ご主人がずっと手を振ってくれた。嬉しいものだ。そこから7kmぐらい直線。ずっと牧場。何も考えずにてれてれと走る。突き当たりで右折し、5kmぐらい直線。ここは緩やかな下り坂なので、ぎゅんぎゅん飛ばす。うーん楽しい。そこで左折、今度は11kmぐらい直線。あはは。もうまっすぐすぎだぜ。突き当たりの国道を左折したら、あとは今日曲がる角は2つだけである。ずっと道なりだ。
国道は微妙に登り坂になっており、高度を徐々に上げていく。峠の標高は490m。普段登ってるところに比べればゴミだ。あんまり関係ないが、この前登ったのは山梨と長野の間にある大弛峠。ここは標高500mぐらいから2360mまで登るという道だった。あれは大変だったなぁ。
…しかし、なんか結構登りが辛い。折りたたみの自転車に荷物を満載しているから、負荷が高いんだろうなぁ。考えてみれば、大したことのない峠でもたくさんトレーニングができるすばらしい鉄下駄ですね。うふふ。なんてマゾいんでしょう。というか、せめて最後に一気に7%ぐらいの坂道で登ってくれればいっそ楽なのに。微妙な登りというのがいかん。
最後は経度の値ばかり眺めつつ峠に到着。途中から雨がそぼ降る道となった。昨日は関東と東海で豪雨があり、京王線が脱線したり、岡崎市で浸水被害があって避難勧告が出たりと、本州もひどいことになっていた。その前線が北海道まで伸びているのだ。で、南から暖かい空気が前線へ今流れ込んでいる最中というわけ。今日は、すでに室蘭や登別のあたりでは洪水に近い被害が出ているようで、天気予報では、
「午後の雨の中心は根室や釧路あたりになるでしょう」
とのことだった。あっひゃっひゃ。ここのことじゃないか。
峠までは暑くて着られなかった雨具を着込み、下りに転じる。ここもだらだらと下るのだが、登りではうっとうしかった斜度のゆるい坂が、今度はうれしい。何しろこがなくてもブレーキをかけなくても、10kmでも20kmでもずっと進むのだから。あたりはずっと原生林。途中に白いドラム缶を積み重ねた入り口が見えた。お。これは地元の秘湯、越川温泉ではありませんか(事前に宿のおじさんから聞いていた)。←「お持参」が変換候補の一個目に出てくるWINDOWS MOBILEのIMEには切れそうになるよね。
広い空き地に小さな小屋。そこに温泉がこんこんと沸いていた。よし、峠でかいた汗を流そうじゃないか。普通ツーリングの途中に温泉とか入ると筋肉が弛緩してあとに差し支えるのだが、今日はせいぜい100kmもないし、峠ももうないからいいか。…と、唐突に話し掛けられる。
「あのー、NHK北見放送局の者なのですが、『普段着の温泉』という番組を制作してまして、すみませんが温泉に入ってるところを撮らせていただいてもいいでしょうか?」
な、なんですと。全裸の俺様をハイビジョンカメラで撮るのね。そしてこのガチムチボディーを(←違います)昼間から総合テレビで全国のお茶の間にお届けするのね。えー。マジすか。前るるぶの取材を受けたことはあったけど、るるぶってレベルじゃないな。ま、お願いされたので承諾し、入って料金を入れようとしたら
「はいカット、もう一度お願いします」
すみませんもたついたのが地元の人っぽくなかったでしょうか?(笑
改めて入り、服を脱いで浴槽へ。プレハブの中の野趣あふれる温泉だが、ガンガンかけ流されていてすばらしい。少し熱いくらいの、鉄を含むナトリウム泉だと思われる。取材やらインタビューやらにつきあっているうちにすっかりのぼせてしまった。ハイビジョンカメラの前でザバーっと立ちあがるわけにもいきませんからな。
服を着て出発。少し行くと、国道の左右をアーチ橋がまたいでいる。こ、これは根北線の遺構じゃありませんか。しかし廃線跡ではない。何しろ、ここまで鉄道が開通したことはないのだ。根北線は、戦時中に突貫工事で土台と橋が建設されたあげく、途中からもう線路が敷かれることのなかった路線である。朽ちた単線の橋がいい味出してるねぇ。写真を撮っていると虫にたかられまくる。アブや蜂がうっとうしいので早々に退散した。
このあたりまで来ると、風景はだいぶ変わってくる。酪農地帯から畑作地帯に来たのだ。防風林に囲まれた雄大な畑、これもよい。ここから知床方面に分岐があり、一路ウトロを目指す。雨がだんだん強くなってきた。まだ雨具なしで走れるレベルだが、まだ20km以上ある。あーもう。
ウトロまで2kmぐらいのところで、道路に光が反射するほど雨が降ってきた。靴の中にも水が。シューズカバーつけなきゃ…でもウトロの食堂まではどうにかもたないかなぁ。
どうにか我慢してウトロの漁港婦人部食堂へ。前来たときはイクラが旨かったが、今年はまだシーズンではない。そこで、日替わりを注文した。じゃがいも、たまねぎ、鮭のフライ。素材が全部旨い。そして旨かったのが小鉢で出てきたイカの塩辛。これは絶品だ。やっぱこの食堂ははずれがない。
おっと、舌鼓を打っているうちに雨が本格的になってまいりました。これはひどい。完全防水モードに着替えて出発。ここからは旧ザ化だ…もうIMEの場カー。…もとい、急坂だ。5%少々の坂を、標高0から170mまで登る。雨ひどい、荷物重い、でだいぶダメージをくらった。雨具を着ていても意味ないくらい、中で汗をかく。
そして知床の自然保護センターだっけ?から原生林の中のダウンヒル。今日のユースホステルは、この先の標高0mのところにあるのだ。ひいひい登ったら全部下りかい。なんつーいやがらせだ。この下り坂は7%あり、雨なのでぜんぜん止まらない。いや、これでもロードレーサーと比べればよほど止まるブレーキで、しかも新品(こんな展開を見越して通常より1mm分厚いシューをつけてある)だから、まぁがんばれば止まるんだけど、車重が
荷物のせいで重いし。ひどいシビアコンディションだ。運転は慎重に。下りきったところに目的地のユースホステルはあった。もうびっしょびしょ。酷い目にあったわー。…とここで冒頭に戻ります。
さて、夕食はラムとタコのしゃぶしゃぶ。これも旨い。風呂上がりのビールも最高。タコはだいぶコシのある食べ心地。いやー幸せだ。
夜になり、外に出ると鹿が5頭もいて、草を悠々と食っている。人間が寄っても完全無視。さすが知床サファリパークだ。
明日は知床の海でシーカヤックをやろうかと思っている。断崖や滝をめぐる自然探訪の旅、楽しみだ。
追記:NHKの放送を録画しておっかなびっくり見たんですが、地元の老人会の皆様の心暖まるストーリーに仕上がっておりました。変な自転車野郎は出てきませんでした。ふぅ。ほっとしたというか残念というか。
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