U.C.Garden banner
←前へ Home 次へ→

Home / 雑記 / Blog / CG / シケプリ / BBS /

目次
8/28 東京→中標津 (航空機+21km)
8/29 中標津〜知床 95km
8/30 知床断崖シーカヤック (カヤック+8km)
8/31 知床の秘湖へ!
9/1 知床〜興部 輪行+87km
9/2 興部〜猿払 146km
9/3 猿払〜稚内空港〜東京 (52km+航空機)

8/31 知床の秘湖へ!

今回のルート

今回のルート。クリックでGoogle Mapsに飛びます。

今日の朝は羅臼湖に向かう予定である。羅臼湖は、知床のハイキングコースの中でもマイナーな方で(大概の人は知床峠と知床五湖で満足する)、秘境ならではの美しい風景が見られるとか。ジーパンにSPD靴(おい)で行こうとしていたのだが、当然のごとくガイドさんに止められた。山登りにも使える長靴を借りて、上下ゴアテックスで行くことに。

今日の同行者は、東京と神奈川から来たそれぞれ一人旅の女性2人。昨日の夕食時に、いっしょに行こうということになった。なんかハードなコースで熊も当然のように出るって聞いたんだけど、女の子二人なんて大丈夫かいな?

しかしその心配は杞憂だったようだ。ユースの外で待っていてくれた二人は、上下モンベルのウェアを着込み、登山用の完全装備だった。はい、よく訓練されていらっしゃいます。まぁ、知床に1人で来るような人ですもんね、心配なんておこがましいですね。

さて今日は登山口まで同行者のレンタカーで行く。知床峠を越えて、広い路肩に駐車(←あとで怒られました、やめましょう)。峠までは激しく霧がかかっていて、昨日と似たような天気かと危ぶんでいたのだが、車から降りて出発する頃になると一気に晴れわたり、この旅では初めて青空が広がったのだった。
やっと晴れたよー
やっと晴れたよー
同行者のレンタカー。
同行者のレンタカー。
人一人分の幅の細い道を登り始める。道の左右はクマザサが茂り、かなり狭い。そしてあたりはだいぶぬかるんでいる。あー確かにこれは普通の格好ではこられないなー。
これは序の口。
これは序の口。
最初の沼。
最初の沼。
しばらく一気に登ると、あとはだいたい平坦な道になった。基本的にクマザサと、ハイマツの藪を抜けていく道だ。北海道で標高700m程度ともなると、もう高い木は生えない。ガサガサ(クマザサをかき分ける音)、バチャバチャ(ぬかるみにはまる音)、カランカラン(熊鈴)という音がずっと続く。

唐突に展望が開け、美しい沼が姿を現した。「一の沼」だ。言い忘れていたが、羅臼湖までは一〜五の沼があり、道は4kmぐらいでそれをめぐっていく。この辺の沼は底まで非常に透明度が高い。オンネトーなどと同じく、酸性が強すぎて生き物が住めないのだろう。そして、周りに木がないのが美しさを際立たせているのだと思う。
だんだん道がハードに。
だんだん道がハードに。
三の沼からのぞむ羅臼岳。
三の沼からのぞむ羅臼岳。
さてさて、次は二の沼。これはけっこうすぐだった。藪はどんどん深くなり、木道はところどころにしかなくなる。三の沼には青空と羅臼岳が逆に映りこみ、なんとも美しい。人工物は足元の木道のみ、周り数kmはまさに大自然だ。
藪こぎ上等。
藪こぎ上等。
おいおい…これ道か?
おいおい…これ道か?
ここを過ぎるとさらに道はハードになる。背丈ほどのクマザサの中をひたすら藪こぎしていかなければならない。道などほとんど見えず、クマザサの背がなんとなく低くなっているところが道なんだろうな、と推測してどうにか進んでいく。足元はよく見えないがひどくぬかるんでよく水たまりになっている。ひざまで泥だらけだ。一般人の立ち入りを拒絶するような道、しかしだからこそ、その先に秘境が期待できるよね。

3人で来たけれど、四の沼、五の沼まではとても世間話をしている余裕などない。せっせとざわざわクマザサをかき分ける。この辺は熊もよく出る地帯で、熊もまた茂みをかき分けているせいでお互い音が聞こえないらしい。で、突然出くわしてしまう可能性が高いそうな。しかしここで出くわしたらオシマイです。マジで。そのための熊鈴。うるさいくらい鳴らさないと怖くて仕方がない。
景色がぱっと開ける。
景色がぱっと開ける。
これも途中の沼。
これも途中の沼。
五の沼を過ぎて少し行くと、しっかり整備された木道に出て、その先にぱっと景色が開けた。おおっ。これが羅臼湖ですかー。これは広い。美しい。水鳥が何羽かいるが、水中に棲めるのはサンショウウオとあと数種類の生き物くらいだけだそうだ。ここまで1時間20分くらい。さぁ引き返すとしましょう。
これが秘湖、羅臼湖だ。
これが秘湖、羅臼湖だ。
ふり返った木道。
ふり返った木道。
帰りも気は抜けない。ぬかるみにはまると2,30cm簡単に沈むし、だからといって道から外れると自然を破壊してしまう。たまに倒木につまづいたりして危ない。昨日知床に詳しい常連のおじいさんに聞いたところによると、
「平日は誰もこないから、単独で行ったりすると危険だけど、休日はサラリーマンの人いっぱい来るから大丈夫だよー」
え、サラリーマンの方々がいらっしゃるんですか!?この秘境にアタッシュケースを下げてスーツでやってくるんですねぇー(昔、ジャケット+革かばんの後輩を霧降高原のリフトに乗せてハイキングに連れ出したことがあったなぁ(笑))。なんてそんなわけないですが。というか休日を利用してやってくるサラリーマンの人すら、ほとんど見かけない。道中すれ違ったのはユースにいた常連の男二人組くらい。せっせと歩いて登山口に戻ると、そこには数人が登り始めていた。子供もいて大変そうだ。子供なら茂みに簡単に埋もれてしまうだろう。
右から雲がやってきた!
右から雲がやってきた!
一天にわかにかき曇り。
一天にわかにかき曇り。
帰り道、知床峠から羅臼岳を遠望する。
帰り道、知床峠から羅臼岳を遠望する。
さて、腹減った! 車に戻ってウトロに行こう。また婦人部食堂にいって、今日はぜいたくしてウニ丼を食べた。ウニのシーズンはそろそろ終わりだが、漁をしている風景はそこら中で見ることができる。ウニは甘く、ねっとりとした食べ心地だ。旨いが、7月に岩内(積丹半島の漁港)で食べたものの方が、多少勝っていたかな。あれはまったく臭みのない、見事な味だった。

帰りは、レンタカーを借りてきたおねーさんが運転するというので任せてみた(それまでは私が運転していたのです)。普段からステップワゴンで通勤しているけれど、自信はないという。知床自然センターからは7%の下りだが、なんだかフットブレーキだけで下ろうとしている。

「そこでギア[D]を[2]に入れないとー」と助手席でいうと
「え、[2]って?」
おいおい。一応エンジンブレーキの説明をすると、 「うわ、ほんとに楽だー。こうやって使うものなんですねー」とか納得している。

「あたしマニュアル免許だからオートマ車の運転とかよく分かんなくてー」
オートマ免許だからマニュアル車の運転とかよく分かんない人は沢山いるだろうけど、珍しいケースですね(^^。というかステップワゴンはオートマじゃないの…(--;;

一般人コース、知床五湖とカムイワッカの滝

さて、ユースに戻って一息ついたらシャトルバスに乗り換えだ。ここから知床五湖、カムイワッカの滝に行く。カムイワッカまでのダート林道は、シャトルバス以外の通行が一切禁止されていて、歩行者や自転車ですら通れない。なので、もう最初から自転車はあきらめて、バスで行くのだ。

最初に来たバスは知床五湖止まり。とりあえず知床五湖を回ることにした。ここは知床観光の定番ハイキングコースであり、一湖〜五湖をめぐる立派な木道が整備されていて誰にでも歩けるようになっている。しかし、だいたいの年は、熊が出没する可能性が高いからということで、一、二湖ぐらいまでしか入れないことが多い。しかし、今年は8/19から全部の歩道が開放されている。これはなんという幸運! この先一生に何度もないかもしれないチャンスだ。バスを降りると、ごく一般の観光客の皆様がいらっしゃる。家族連れ、カップル、老夫婦、オバサンの集団。みんな普段着に普通の運動靴(人によっては革靴)で散歩している。感覚としては、石神井公園とそんなに変わらないかもしれない。でもね。みんな舐めた装備だけどここは知床サファリパークなのよね。
シャトルバス。
シャトルバス。
なんて立派な遊歩道。
なんて立派な遊歩道。
羅臼湖帰りの私は、装備的に異常に浮いていた。登山装備の長靴にウェア上下、うるさく鳴り響く熊鈴に、カメラもごつい防水仕様。それがリンリン鳴らしながら早足で歩いていくと、周りが道をあける。うーん。(汗
一湖。
一湖。
道沿いによく咲いている。
道沿いによく咲いている。
途中で高校生か大学生の男二人組が、半笑いで話し掛けてきた。
男「へー、熊鈴買ったんですかー(うわ、こいつほんとに熊鈴なんて買っちゃってるよププー、それになにそのカッコ悪い服装、マジありえなくね?という意味)」
私「いや、午前中はすごい山道を歩いていたので」
男「へ、で、熊出ました?(半笑い)」
君ら熊にあったことないんだろうなぁ。あの恐怖を一度味わってみるといいのに。一番開発されている知床横断道路ですら、ヒグマが出るというのに。ヒグマの巣みたいなこの森をそんなTシャツと七分ズボンで歩けるほど、今の私は無謀じゃないよ。
二湖。
二湖。
三湖。
三湖。
湖は羅臼湖のあたりの沼と違い、森に囲まれている。神秘的に水をたたえているが、透明度は低い。うーん。さっきの羅臼湖ですごく感動したあとだったので、いまいち感動が薄いなぁ。そこの木道にしゃがんで水に見入ってるカップルとかも邪魔よね。「蹴りたい背中」って何年前だっけー?
倒木からは新しい命が。
倒木からは新しい命が。
四湖。
四湖。
五湖。
五湖。
緊張感ないねぇ君たちは…
緊張感ないねぇ君たちは…
さくさく歩いたら、一周5kmかそこらを40分ちょっとで歩ききってしまった。ま、こんなもんか。さて、シャトルバスの続きに乗ろう。この先ダートを12kmを走り、再奥のカムイワッカの滝まで行く。

カムイワッカの滝は、温泉の流れる川と滝だ。活火山の硫黄山から流れてくる強酸性(pH 2)の温泉が、急な岩肌を流れ落ちる名勝だ。言うなれば、熱い亜硫酸の滝だ。目なんかに入ったらえらいことですよ…みんな何でそんな危険なとこに行くの? 俺もだが。
ダート林道に入る。
ダート林道に入る。
海まで見渡せる絶景ポイント。
海まで見渡せる絶景ポイント。
バスはダートを走っていく。ダートを走るバスっていいよねぇ。大雪山のもいい。未舗装だがあんまりガタガタしないのはさすが独立懸架サスペンション。エルフとはレベルが違いますね(当たり前だ)。沿道には鹿やら、キタキツネやらたくさんいた。運転手はそのたび減速して、シャッターチャンスをくれる。
キタキツネ。
キタキツネ。
滝の下は急流。
滝の下は急流。
目的地のカムイワッカの滝で降り、早速滝登りを開始する。羅臼湖のおかげで、ここでも完全装備の私は、ほかの人々がなんか専用の靴下にはきかえている間に、もりもりと斜面を登ることができた。この滝は普通のところと違って、川の水が死の水なので、流れているところだけコケが生えずに逆に歩きやすい。
カムイワッカの滝。
カムイワッカの滝。
この斜面を登る。
この斜面を登る。
上まで行くと、2つ目の滝の手前で見張りのおじさんが「こんにちは、はいここまでです」という感じで止めてくる。よく見るとお互いの格好がいっしょだ。ということはここで一番適した装備ってことだね。ふふ。しばらく雑談し、川に足を浸す。虫刺されにしみる。手もささくれにしみる。なめると刺激が。いやいや、亜硫酸をなめたらいかんですな。滝つぼの温度は、ここだとまだ30度弱しかない。さすがに服を脱いで入れるレベルではない。
上から見るとけっこうな急斜面だ。
上から見るとけっこうな急斜面だ。
流れているのが全部温泉なのだからすごい。
流れているのが全部温泉なのだからすごい。
記念写真を撮ってもらい、下っていく。バス停にちょうどバスがやってきたので乗り、ユースに帰る。さっきからお腹がなりっぱなし。夕食のほっけでご飯を3杯も食べた。
ホッケ定食うまー。
ホッケ定食うまー。
夕食後、今日羅臼湖に行った人たちとホテル地の涯の露天風呂に行くことに。またもやレンタカーを奪って運転する(規定違反なのでやめましょう)。鹿の横でまったりと入浴を楽しむかと思いきや、熊を恐れて鈴を鳴らしつづけていた。温まって、宿に帰ってビールを一杯。

その後はガイドさんのサービスで満天の星空観察だ(宿に来た中国人の通訳をしたらサービスといってやってくれた)。流れ星を3個も見たし、りゅう座とかきりん座とか変な星座も見た。昔野辺山ではよく見えなかったアンドロメダ星雲もここでははっきり見える。うーん3日間楽しかったなぁ。2月もおすすめだとか。また来よう。

あ、そうだ。大事なことを書き忘れていた。今日は宿のすぐ近くの岩尾別川にヒグマが出たそうな。遡上してきたマスを狙っているところを客が2人目撃していたので間違いない。ま、いまさら誰も驚かなかったんだけどね。「へー、あらら、そうですか」で流されてしまうのが知床のすごいところだ。今回ニアミスで済んだのは幸運というべきか…

←前へ Home 次へ→


SHIMURA Harutoki <tt67136(あっと)mail.ecc.u-tokyo.ac.jp>

Valid HTML 4.0! Valid CSS! Powered by Apache Powered by Mod perl