9/11 帯広〜広尾線廃線跡〜南十勝 69km
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今回のルート。クリックでGoogle Mapsに飛びます。
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6時過ぎに寒くて目が覚めた。昨日のトウモロコシの残りを食べて出発。結局奥さんには挨拶できなくて心残りだ。この場を借りてお礼を。
今日からは国道236号線を南下し、南端のえりも岬を4日かけてぐるっと回っていく。このコースはかつて鉄道でも計画され、東の帯広からは広尾線、西の苫小牧からは日高本線が建設された。日高本線は様似、広尾線は広尾まで開通したが結局つながらず、広尾線は20年と少し前、JR転換前に廃止された。今日はその広尾線沿いに走ることとなる。
霧雨の降る中スタート。車の多い道を南下していく。雨はすぐ止んだがまだ肌寒い。まず目指すは、広尾線「愛国」駅跡だ。広尾線にある「愛国」「幸福」という駅は、「愛(の)国→幸福」という記念切符が売られたことから、廃止直前の当時は全国的に有名になった。まあ無粋なことを言えば、正確には「愛の国」じゃなくて「国を愛する」ですけどね。意図的な訓読ミスですなあ。当時そこにあった愛国青年団から名を取ってるのだから。というわけだが右翼の皆様が訪れるかどうかは知らない。いっぽう幸福駅は「幸震」という集落に福井からの入殖者が多かったから幸「福」にしたとか。…最近秋葉原にできた「アキバ田代通り」の方がマトモな由来を考えていたぞ。
…ま、こじつけでもいいけどね。一面に作物の実る十勝平野の中、現れた集落の中を駅の跡へ。駅舎が建て直されてしまい、記念館になっているのはちょっと残念。でもホームはそのままで、9600型機関車がいた。駅前には車掌車。しかしここまでの道から広尾線の面影をほとんど見られなかった気がする。ふつう原野の廃線ならば、土とバラストを盛った道床や橋梁がずっと残るものだが、さすがは人の手の入った十勝地方、ほとんど崩されてしまったとみえる(実際このあともそうだった気がする)。
土産物に「愛国→幸福」の硬券をラミネートしたものを買い、南下を続けた。
12km先に幸福駅がある。ここには集落はほとんどないが、愛国より幾分観光地化されてにぎわっていた。
ここにはキハ22が2両止まっている。最終列車はキハ22だったが、その前の通常の運用はキハ40じゃなかったっけか。さすがに現役のキハ40を展示するのはアレか。まあいいや(本当にどうでもいい)。美男美女の新婚夫婦が幸せそうに大きなサイズの切苻なんか持って記念撮影などしているのをマジ死ねよ微笑ましく眺めながら去る。
次の集落は中札内(なかさつない)。5kmぐらい先の比較的大きな街だ。バターサンドで有名な六花亭の工場がある町だ。ここにも鉄道記念公園がある。行ってみると有蓋車が2両(片方は遊具に改造済)。やはりホームのところを除くと道床はない。9600→キハ22→ワムとグレードダウンしていくのが面白いね。え?面白くない?
電話ボックスを発見したので、えりもの宿の予約と、東京での仕事の連絡を(汗。しかし東京へ8.5秒/10円で、えりもへは9秒/10円とはね。えりも岬遠いなあ。東京とほとんど変わらないじゃん!結果240円も取られたが、後顧の憂いなく旅を続けられるんだからいいさ。
さて、中札内からは空も晴れてまぶしい日差しが辺りを満たす。ずっと畑が続き、たまに1列に並んだ防風林が。風は涼しくいい気分である。今日はせいぜい7, 80kmも走ればいいし、朝早く出たから余裕。たらたら12km/h程度で平和なポタリングを楽しむ(サボりすぎです)。
更別(さらべつ)のセイコーマートでカップめんの昼食をとり、ジャージとレーパンに着替えて出発だ。次の集落は宿の手前の最後の街、忠類(ちゅうるい)。だらだらいい気分で走っていると下りが始まった。あーれ?今までド平坦かと思っていたけど。GPSで標高をみると177m。登った覚えもない坂を下るという変な体験をした。下り切ると忠類。ここはナウマン象が出土した遺跡がある町で、それにちなんだ道の駅や温泉、博物館などがある。だが、博物館に行ってみると、公共施設は火曜定休だという。がーん。しくしく。
仕方ない、宿まで行くか。まだ2時だけど。
そうそう、実は私は気づかなかったのだが、これを書いている2007年現在、郵便局の裏にまだ広尾線忠類駅が残っていたらしい。全く手を加えられないまま、ただそこにあるとか。ああ、行けなかったのが悔まれる。(ネットで見つけた映像)
国道から逸れて県道、そして農道に入り、東へ。この道は実に素晴らしい。まっすぐで車通りは少なく、黄色い花が沿道に咲き乱れ、陽光がきらめく。一眼レフのレンズを単焦点に替えて喜んで風景を撮っていたら、通りがかった軽自動車のおにーさんに
「あの、大丈夫ですか」
と心配されちったよ。
今日の目的地、晩成までは6kmの軽い峠越え。登りは12km/hぐらいで、平地とそう変わらなかった。下りの途中でヘビがいた。今年は死んだエゾリスとヘビしか見てないなあ。可愛いキタキツネとか出てこないかなあ(クマは勘弁)。…と、なんとその先にキタキツネが! おー。可愛い〜、でもカメラを向けたら逃げちゃった。
今日の宿は、とほ宿の「セキレイ舘」。周囲400mには何もなく、その先もよろず屋と、お社があるだけの原野の中だ。とほ宿はユースと同程度の低価格だが、個人が手をかけてつくっている宿で、きれいでいいところが多い。ここもご多分にもれず、実に各所に気が配られ、ウッディな内装も好感触である。
車庫に自転車を入れると、ピンクのランドナーが。ダブルレバーだ。古いがよく整備されている。他には競技用のオフロードバイクがたくさん。食堂のコミックコーナーには
・「シャカリキ!」
・「オーバードライヴ」
・「並木橋通りアオバ自転車店」
(意図的に技粋)
お、これはもう、ねえ。ご主人サイクリストですか?それとも奥様? 聞くと奥様の趣味が、ランドナーでのツーリングとオートバイ競技なんだとか。この前も自転車で三国峠(関東のじゃないぞ)行ってきたんだそうな。ヒルクライムの話題で盛り上がる。
「平地じゃなくて登り坂がいいですよね。汗流すと『生きてる』感じが」
「登り切ったらもう下り坂はいらないですよねー☆」
とか意気投合して放言したが、周囲のお客さんには理解されるわけもない。他の客は心筋梗塞で倒れてからハーレー買った爺さんと、CB1300乗りの楽しい関西人の爺さんと、CB400乗りの若者であった。…うーん、布教できそうにない。
夕食は質・量ともに満足。品数の多い家庭料理という感じ。宿主夫婦をまじえて談笶するうち、夜は更けていった。
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